上半期の読書を振り返って厳選に厳選を重ねたおすすめ本15選を紹介します。
2019年上半期に発売した書籍に絞っての15選です。
特に2019年前半は新作を読んでくらくらになるほど面白い小説との出会いがたくさんあったので今後の読書の参考にしていただけたら幸いです。
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2019年上半期発売書籍おすすめ15選
倉井眉介『怪物の木こり』
サイコパス弁護士二宮と頭を割って脳を盗む「脳泥棒」との戦いのサイコスリラーです。
二宮の章と脳泥棒を追いかける警察の章の2つの視点で綴られています。
意外な展開が繰り返されて二宮や脳泥棒の過去にあった出来事が明らかになっていきます。
第17回『このミステリーはすごい!』大賞作品です。
二宮視点の場面と警察視点の場面とが交互に綴られています。
二つの物語の筋道が近づいていって事実が明らかになっていくのは後半にかけて先を知りたい欲求が高まってますます読むスピードが速くなっていきます。
スリリングな展開と残酷なインパクトの先に『人の心』を感じられる二宮の過去や映美との交流に温かさも感じられ、一冊の中で色んな気持ちを感じることができる小説です!
窪美澄『トリニティ』
72歳の鈴子の元にイラストレーター早川朔の訃報が届きます。そしてその訃報を登紀子へ連絡するところから物語は始まります。
50年前出版社で出会った三人の女性が半生かけ、何を代償にしても手に入れようとした<トリニティ=かけがえのない三つのもの>がそれぞれの視点から交差するように描かれています。
昭和・平成から未来へと繋ぐ現代日本を生き抜く女性達を中心に紡がれる運命の物語です。
第161回直木賞候補作です。
時代背景も三島由紀夫や夏目漱石の名前や、地下鉄のテロ事件、あさま山荘事件などその時代のトピックがその時代を生きた登場人物の考えに影響を及ぼしていて、
ただのフィクションではなく私たちの世界の物語として感じることができました。
2019年上半期の平成が終わるというタイミングに合ってるとも言えますが、
変わっていく時代の中で必死に生きてきた人たちの繋がりとして私たちがいるそういうことを重厚で圧倒的に感じさせてくれる物語でした。
150ページくらいから読むのを止められず一気読みでした。
伊坂幸太郎『シーソーモンスター』
出会ってはいけない二人が出会った時、世界の均衡は崩れ、物語は暴走していく。
2つの物語が収められています。
『シーソーモンスター』は昭和バブル期の物語です。
運命的にそりが合わない嫁姑の争いと板挟みになっている夫の話です。
ただの家庭内の不和を描いた作品ではなく、嫁姑の表とも裏とも言えない顔が絡みに絡んで夫が巻き込まれていく出来事が想定外の展開で描かれています。
『スピンモンスター』は近未来の話です。
配達人の「僕」は意識しないわけにはいかない過去と人間がいます。
ある天才エンジニアが遺した手紙を握りしめ、そんな配達人と天才エンジニアの旧友が見えない敵の暴走を前に奮闘する話です。
中央公論新社130周年記念の文芸誌「小説BOC」の競作企画で伊坂幸太郎さんが生んだ2作品が収められています。
「人と人との対立」というキーワードで「海族と山族の血筋をひく者同士はぶつかり合う運命にある」という設定で作られた物語です。
対立するという関係の先にある関係が「シーソーモンスター」にも「スピンモンスター」にも最後にはうっすらとではありますが感じることができて読後感もよかったです。
はらはらどきどきするアクションやユーモアのある会話、謎解きの面白さなど、読んでいる最中楽しくて仕方がありませんでした。
伊坂幸太郎作品の「面白さ」が溢れている作品!
羽田圭介『ポルシェ太郎』
35歳。起業しポルシェを購入した太郎の話です。
欲望とそれを叶える為の危ない橋を渡りながら太郎は満たされ、さらに渇望し、時には虚しくなりながらハードボイルドな世界で生きていきます。
自慢の愛車で向かうのは欲望か、死か、ハラハラドキドキ、そしてリアルな30代の気持ちを描いた物語です。
最後の最後まではらはらしつつ、ポルシェに拘る姿に笑いつつ、少し共感しつつ、あっという間の読書でした。
羽田圭介さんの作品は時間が経っても内容を思い出せるインパクトの強い本ばかりです。
『ポルシェ太郎』も間違いなくずっと内容を思い出せる本だろうと思います。
それはもしかしたら一つの素晴らしい本の指標の一つなのかも。
川村元気『百花』
認知症と診断され、徐々に息子を忘れていく母を介護しながら泉は母との思い出を蘇らせていきます。
ふたりで生きてきた親子にはどうしても忘れることができない出来事があります。
ある日突然母がいなくなってしまった出来事。
ふたりが背負う過去に、泉は手を伸ばし知ろうとします。
現代において失われていくもの、残り続けていくものは何なのでしょうか。
すべてを忘れていく母が思い出さえてくれたこととは何なのでしょうか。
現代に新たな光を投げかける、愛と記憶の物語です。
昔の小説を今読んでも楽しめます。でもこの小説は今を生きている人に読んで欲しいと思いました。
認知症も結婚も出産も人の死もずっとこれからも不変の話題だと思うけど、今の時代の空気みたいなものが溢れている小説だと思います。
それは登場人物の仕事など日々過ごしていく物事への感じ方がとても今の時代に生きる人に近いと思うからです。
登場人物と私自身の立場がまるで違うのに共感がたくさんあって私にとって大切な一冊になりました。
小野寺史宜『ライフ』
27歳・井川幹太はアルバイトを掛け持ちしながらワンルームアパートで一人暮らしを続けています。
気楽なアパート暮らしのはずだったが上の階に引っ越してきた戸田さんと望まない付き合いが始まります。
夫婦喧嘩から育児まであけっぴろげな戸田さんに頼られながら、幹太は今まで気にも留めていなかった隣人付き合いも広がっていき、自分自身のひとつの「願い」にも気づいていきます。
誰にも頼らず、ひとりで生きられればいいと思っていた青年が新たな一歩を踏み出すまでを描いた胸が熱くなる青春小説です。
小説の各人物の名前に対する由来が語られる場面が結構あって、脇役のような人物にも焦点が当たっている感じがとても好みの小説でした。
登場人物が一歩踏み出そうという小説は読後感よくて自身のもやもやを吹き飛ばすような効力があります。
色んな人生に触れられる(まさにライフ!)小説は素敵です。
江國香織『彼女たちの場合は』
14歳と17歳。ニューヨークの郊外に住むいとこ同士の礼那と逸佳は、ある秋の日、2人きりで”アメリカを見る”旅に出ました。
長距離バスやアムトラックを乗り継いで、ボストン、メインビーチズ、マンチェスター、クリーヴランド……と二人の旅は続いていきます。
各地で訪れる出会いと別れ、積み重なる二人だけの思い出……。
繋がっていくもの、切れていくもの、変化していくもの、変わらないもの、生まれるものなど、礼那の視点と逸佳の視点、2人の親の視点で綴られた物語です。
上げたらきりがないほどささる文章があって、記事の始めに書きましたが江國香織さんの使う言葉や表現が素敵です。
独特とまではいかないですが意識外から刺さるような文章や会話が読んでいて面白いのです。
だから旅の各出来事や美しい風景や愛すべき人々と合わせて小説まるごと楽しめてしまう一冊でした。
旅したくなります。懐かしくて、少し羨ましくなるような気持ちで読み終えた小説です。
今村夏子『むらさきのスカートの女』
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことを〈わたし〉は気になって仕方がありません。
「むらさきのスカートの女」の行動、言葉を異常ともいえる執着で観察しています。
〈わたし〉は彼女とともだちになるために〈わたし〉の職場で彼女が働き出すように誘導します。そしてまたその行動を観察し続けるのです。
狂気と紙一重の滑稽さを孕んだ中編小説です。
第161回芥川賞候補作です。
むらさきのスカートの女は勿論、〈わたし〉も職場の人間も皆、個性があって気持ちの流れにはらはらしながらもついつい次へ次へ読んでしまいます。
むらさきのスカートの女の魅力と取り巻く狂気が面白いです。
学校の教科書にこういう小説があったら心情を推測する授業で色んな意見が出て面白いかもしれません。しかも先が気になって生徒が初めて買う小説になるかも。
確かに帯に書かれていた「いま、もっとも注目を集める小説家」という文面通り魅力的な一冊でした。
岩井圭也『夏の陰』
倉内岳は剣道の卓越した実力を持ちながら公式戦にはほとんど出場したことがなく、運送会社のドライバーとして働いています。
岳には囚われ続けている過去があり、それは過去の父親が起こした殺人事件があります。
警察剣道「特練」のエリート、辰野和馬はその殺人事件で被害にあった人の息子です。彼もまた岳とは違った形で「死」を抱えて生きてきました。
「死」を抱えたもの同士が交わり戦う「罪」と「赦し」の物語です。
ひたすらに岳と和馬が前向きな方向で進んで欲しいと思いながら読んで夢中になることができました。
自分と向き合い他者と向き合って進んで行く展開に圧倒されました。
設定は重く、考えさせられながら深く心に残った作品です。
窪美澄『いるいないみらい』
未来に向けて家族のカタチを模索する人たちの5つの物語が綴られた短編集。
「1DKとメロンパン」。知佳は夫との二人の快適な生活に満足しています。しかし妹の出産を機に彼の様子が変わってきて……。
「無花果のレジデンス」。妊活を始めた夫婦の話です。4か月が経ち時間がないとあせる妻に対し、夫の睦生は……。
「私は子どもが大嫌い」。単身者しか入居できないはずのマンションで独身OLの茂斗子は子どもの泣き声を聞いて……。
「ほおずきを鳴らす」。博嗣は母に会いに老人介護施設行くと煙草が吸いたくなりタワーマンション近くの公園へ足を運びます。そこでほおずきを鳴らす女と出会って……。
「金木犀のベランダ」。パン屋を営む夫婦の話です。繭子はパンに愛情を注ぎ、お客さんの手に届けることに喜びを感じて過ごしています。子どもについては自然に任せて過ごしていたのだが……。
子どもがいてもいなくても……。毎日を懸命に生きる人へそっと手を差し伸べてくれる5つの物語です。
どの話もいろんな家族のカタチを想像する中でパートナーや身の回りの物事と懸命に向き合ってあたたかさのかけらのようなものを感じられました。
それが嬉しくて、自分自身にも手を差し伸べてもらえたような気持ちにさせてもらえた大切な一冊になりました。
木皿泉『カゲロボ』
イジメに遭う中学生、周囲から認知症を疑われる老人、ホスピスに入った患者、殺人を犯そうとする中年女性など、人生の危機に面した彼らを見ている存在がいます。
はじめはたわいもない都市伝説だったカゲロボという存在は彼らを見守っているのでしょうか。それとも罰するためにいるのでしょうか。
いつもの街で彼らに起きる「人生の奇跡」のカゲロボ物語が9つの短編として綴られています。
子どもから老人まで様々な視点で描かれている物語が一冊の本に入っているというのはすごい。
しかも全部「そういう気持ちなんだ」と説得力ある雰囲気と気持ちで感じ入りました。
「カゲロボ」とは一体何なのでしょうか。
読み飛ばすことのできない言葉が詰まっている『カゲロボ』についての物語からなかなか読むのを止めることができずほとんど一気読みでした。
原田マハ『美しき愚かものたちのタブロー』
日本人のほとんどが本物の西洋絵画を見たことのない時代に、ロンドンとパリで絵画を買い集めた松方は、実はそもそもは「審美眼」を持ち合わせていない男でした。
絵画収集の道先案内人となった美術史家の卵・田代との出逢い、クロード・モネとの親交、何よりゴッホやルノアールといった近代美術の傑作の数々によって美に目覚めていく松方だが戦争へと突き進む日本と国際情勢によって松方の夢は無念の気持ちと共に霞んでいきます。
夢一つのために生涯をかけた不世出の実業家・松方。戦時下のフランスで絵画コレクションを守り抜いた孤独な飛行機乗り・日置。松方の夢の周りにいてアートに並々ならぬ想いを持っている美術史家・田代。講和に向けて多忙を極める首相・吉田茂。
彼らは世界でも有数の「美術館好き」と言われる日本人です。
そんなアートへの探求心の礎を築いた男達が美しき理想と不屈の信念で、無謀とも思える絵画の帰還を実現させた「愚かものたち」の冒険が胸に迫る物語です。
第161回直木賞候補作の奇跡が積み重なった国立西洋美術館の誕生秘話。
無謀とも思える絵画の帰還を実現させた人々の人生と信念が描かれています。
第二次世界大戦前後の激動の世界で形は違ってもタブロー(額縁のおさめられた絵)に取り憑かれた男たちの姿が熱い。
なによりも全てを注ぎ込めるというのでしょうか。そんな人達の物語なので読んでいて自分も影響されてもっともっと頑張らなきゃと思うような気持ちにさせられます。
住野よる『麦本三歩の好きなもの』
図書館勤務の20代女子、麦本三歩のなにげなく愛おしい日々を描いた日常小説です。
麦本三歩はぼうっとしていて、食べ過ぎでおっちょこちょい、間抜けという他者評価です。
彼女の周りはそんな三歩にそれぞれの距離感で接していて三歩も周りの人たちに素直で自分らしく接していきます。
穏やかな日常というよりは麦本三歩の個性の彩りが眩しくて何でもない日常が特別に感じられるような小説です。
読んだ後に心地よさがある本です。
登場人物の砕けた感じが親しみを持ててついつい笑ってしまうような読書でした。
気楽に読めて明るい気持ちになれるような一冊です。
上田岳弘『ニムロッド』
「僕」は仮想通貨に目をつけた社長の指示でビットコインをネット上で「採掘」する業務に携わります。
恋人の田久保紀子は中絶と離婚のトラウマを抱えた外資系証券会社勤務です。
そして元同僚のニムロッドこと荷室仁は小説家の夢を挫折した過去をもっています。
僕を中心に生まれる2人とのやりとりは少しずつ自身の生き方に影響を与えて進んでいく話です。
第160回芥川賞受賞作です。
ビットコインなど小説では新しいと思えるような題材が取り扱われています。
ついつい興味をもってしまうような雑学もたくさんあって面白く読みました。
独特な小説の世界にどっぷり浸れる読書です。
白石一文『プラスチックの祈り』
作家・姫野伸昌は妻の「死」を境に酒浸りの毎日を送っています。
そんな生活の中で突如、身体のあちこちがプラスチック化する不可思議な現象が起き始めます。
不可思議な現象と原因を自身の過去から探そうとしても混乱するばかり。
自分の記憶にも改竄や欠落があることに気づいていくからです。
過去がなぜ欠落、改竄されてしまっているのかも含めて自分自身に潜んでいる謎を解き明かしていく新感覚を与えるようなミステリーです。
今までの白石一文さんの作品を想像して読んで私的に意外で驚きました。
でもそういう新鮮さが面白かったです。
「なんだこれは」と言ってしまうような私の中で問題作で驚きから始まり新感覚を楽しむように読んだ読書でした。
終わりに
笑ってしまうくらい絞れなくて20作品くらいから泣く思いで絞った15選です。
あくまで私の主観で選んだものになりますが全力でお勧めしたい本を紹介しています。
下半期もスタートしますがまた楽しい読書の時間を過ごすための参考になれば幸いです。
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