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恩田陸『祝祭と予感』感想【『蜜蜂と遠雷』待望のスピンオフ短編集】

本屋大賞、直木賞、W受賞作『蜜蜂と遠雷』の大好きな彼らにまた会えます。

『蜜蜂と遠雷』は現在映画でも大注目を集めていますね!

恩田陸『蜜蜂と遠雷』感想【人と音に文章を通じて震える傑作】第156回直木賞受賞、第14回本屋大賞受賞と脅威のW受賞の偉業を成し遂げた作品です! そして映画化も決定し、10月4日公開です! ...

『蜜蜂と遠雷』の登場人物はそれぞれにドラマがあって、個性があって、最初から最後までどの場面でも興奮と感動がありました。

そんな『蜜蜂と遠雷』のスピンオフ短編集。

また彼らに会えると思ったら楽しみで楽しみでなりませんでした。

簡単な説明・あらすじ

本編では描かれなかった秘密など、数々のエピソードが描かれています。

入賞者ツアーのはざまで亜夜とマサルとなぜか塵が二人のピアノ恩師・綿貫先生の墓参りをする「祝祭と掃苔」。

芳ケ江国際ピアノコンクールの審査員ナサニエルと三枝子の若き日の衝撃的な出会いとその後を描いた「獅子と芍薬」。

作曲家・菱沼忠明が課題曲「春と修羅」を作るきっかけとなった忘れ得ぬ一人の教え子の追憶「袈裟と鞦韆」。

ジュリアード音楽院に留学したマサルが意外な一面を見せて師と出会う「竪琴と葦笛」。

楽器選びに悩むヴィオラ奏者・奏に天啓を伝える「鈴蘭と階段」。

ピアノの巨匠ホフマンが幼い塵と初めて出会った永遠のような瞬間「伝説と予感」。

全6篇の短編作品が収められています。

ここからネタバレ注意!

祝祭と予感の感想(ネタバレ)

祝祭と掃苔の感想

「なんだか、入賞者ツアーというより、僕ら、墓参りツアーになってない?」

「掃苔ツアーね」

「なにそれ、ソウタイ?」

「墓参りのことをそう言うの」

三人の会話を読んでいると『蜜蜂と遠雷』の彼らにまた出会えた嬉しさが込み上げます。

演奏していない時の三人には迫力などはなく、ただ普通の和やかな会話だけ。

エンドロールのような穏やかさですが、音楽が好きな三人の会話はやっぱり音楽好きならではの会話ばかりです。

演奏者であり、お互いがお互いがお互いのファンであるような会話は和みます。

獅子と芍薬の感想

三枝子とナサニエルの若き日の話。演奏者としてライバルであり、そして音楽を聴けばお互いを認める存在であることが私も嬉しいです。

パーティでお互いがお互いの音楽を褒めているところはいい関係だと思います。

年月経って別れも経験したけど、『蜜蜂と遠雷』の話が終わってブランクも忘れて話し込む姿は恋愛だけではない深い関係を感じました。こういう関係は素敵ですね。

袈裟と鞦韆の感想

『蜜蜂と遠雷』の世界を深める作品です。

『蜜蜂と遠雷』では課題曲「春と修羅」の理解について考えるような場面もありましたが、曲には作られる歴史と想いが込められているということが描かれていました。

哀しくもあり、でも確実に世界を深めてくれるような感覚。

『蜜蜂と遠雷』ファンにはぜひ読んで欲しい、感想を共有したいと思える作品でした。

竪琴と葦笛の感想

ナサニエルがどんどん私の中で優しいお兄さんのような存在になっていきます笑

なんて面倒見がよくて優しいのでしょう。

マサルのしたたかさも光りますがうまく師をつなぐことができたことへの安心感が勝りました。

鈴蘭と階段の感想

演奏者にとって楽器との出会いというのは運命的なのですね。

亜夜と塵の仲が深まっているような感じが気になりますが、この音楽で広がる繋がりの強さと温かさを感じました。

演奏者の世界は天才の中の天才が集まるからこそ、意外に狭いのかもしれません。

チゲ鍋の味となぞって描かれていることに笑いました。

伝説と予感の感想

塵は亜夜やマサルとは違った種類ではありますが圧倒的な天才さが伝わってきます。

これが根本的な『蜜蜂と遠雷』の始まりのような物語。

ホフマンも噂ではよく登場しましたが主として描かれたことが嬉しいです。

ここから広がっていくのですね。

終わりに

スピンオフ短編集として存分に楽しむことができました。

『蜜蜂と遠雷』ファンの人たちへのプレゼントのような作品集です。

映画も観てみたいな。

また再度『蜜蜂と遠雷』を読んでみたら違った面白さを発見できそうです。

映画も観て、それからじっくり再読してみようと思います。

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一蔵とけい
一蔵とけい
社会人の本好きです。現在、知的障害者の支援施設で働いています。 小説を読むことも書くことも大好きです。読書をもっと楽しむための雑記ブログを作りたいという気持ちで立ち上げました。

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