さて2019年ももうじき終わり、2020年を迎えようとしています。
そこで今年一年の読書を振り返って厳選に厳選を重ねたおすすめ本10選を紹介します。
2019年発売書籍限定です。
7月には上半期発売書籍のおすすめ本15選の記事も投稿しました。
今回は上半期・下半期合わせた丸一年のおすすめと期間を長くしながら、さらに絞りに絞っての10選です。
2019年前半と同じく2019年後半も新作を読んでくらくらになるほど面白い小説との出会いがたくさんあったので今後の読書の参考にしていただけたら幸いです。
Contents
2019年発売書籍おすすめ10選
綿矢りさ『生のみ生のままで』
逢衣(あい)と彩夏(さいか)は、25歳の夏に出会い、そして恋に落ちます。
携帯電話ショップで働く逢衣と、芸能界で活躍する彩夏。
生きる環境が異なり、これまで互いに男性と交際していたふたりに、幸せに満ちた濃密な日々が始まります。
しかし、ある事件をきっかけに、状況は一変。
ふたりの関係の行く末を描いた物語です。
2人が惹かれ合う姿に小説の序盤から最後までずっとどきどきしていました。
とても純粋で真っ直ぐで、強くも弱くもなってしまうような2人の姿は綺麗です。
性別がどうではなくて、相手の喜びを自分の喜びに感じられるような2人が大好きで最後にかけて胸が一杯になりました。
文章が綺麗で上下巻があっという間。2人の行く末が気になって空いた時間すぐ手にとって夢中の読書でした。
窪美澄『トリニティ』
72歳の鈴子の元にイラストレーター早川朔の訃報が届きます。そしてその訃報を登紀子へ連絡するところから物語は始まります。
50年前出版社で出会った三人の女性が半生かけ、何を代償にしても手に入れようとした<トリニティ=かけがえのない三つのもの>がそれぞれの視点から交差するように描かれています。
昭和・平成から未来へと繋ぐ現代日本を生き抜く女性達を中心に紡がれる運命の物語です。
第161回直木賞候補作です。
時代背景も三島由紀夫や夏目漱石の名前や、地下鉄のテロ事件、あさま山荘事件などその時代のトピックがその時代を生きた登場人物の考えに影響を及ぼしていて、
ただのフィクションではなく私たちの世界の物語として感じることができました。
2019年上半期の平成が終わるというタイミングに合ってるとも言えますが、
変わっていく時代の中で必死に生きてきた人たちの繋がりとして私たちがいるそういうことを重厚で圧倒的に感じさせてくれる物語でした。
150ページくらいから読むのを止められず一気読みでした。
道尾秀介『いけない』
4つの章立てで描かれる衝撃のミステリーです。
どの章にも、最後の1ページを捲ると物語ががらりと変貌するトリックがあります。
どの章にもラストページの後に再読すると物語に隠された本当の真相が浮かび上がります。
さらに終章を読み終えるとこれまでの物語すべてが絡み合い、新たな真実にたどり着く大仕掛けが待ち受けています。
「ここ分かった?」と読み終えたら感想戦したくなること必至の体験型ミステリー小説です。
今年一番読み返した読書です。
「王様のブランチ」で紹介され大きな話題となった今年を代表する一冊です。
読めば読むほど発見があってなんて奥深い! そして面白い!
小説の世界に入るというのはこういうことなんだと私は思いました。
どきどきわくわく、怖さもある……ってまさにミステリーを読む醍醐味ですね。
たくさんの驚きと共に何度も楽しめる超絶技巧のミステリーです!
湊かなえ『落日』
新人脚本家の甲斐千尋は、新進気鋭の映画監督・長谷部香から新作の相談を受けます。
『笹塚町一家殺害事件』では引きこもりの男性が高校生の妹を自宅で刺殺後、放火して両親も死に至らしめました。
15年前に起きた、判決も確定しているこの事件を手掛けたいと言います。
笹塚町は千尋の生まれ故郷で向き合うことのできていない過去があります。
香は何故この事件を撮りたいのか、千尋はどう向き合うのか。
”真実”とは、”救い”とは、そして”表現”するいうことは。
絶望の深淵を見た人々の祈りと再生の物語です。
直木賞候補作となり、今まさに話題となっている一冊です。
登場人物の感情が深いところで絡まっていて、それぞれの人物の想いを想像して深みにはまっていきました。
ふと人物の行動を考えてみると急に泣きたくなってなってしまうような深みがあって、そういう小説の魅力に憑りつかれて湊かなえさんの作品をいつも追ってしまう。
今年のお薦め書籍として外せない一冊です。
川村元気『百花』
認知症と診断され、徐々に息子を忘れていく母を介護しながら泉は母との思い出を蘇らせていきます。
ふたりで生きてきた親子にはどうしても忘れることができない出来事があります。
ある日突然母がいなくなってしまった出来事。
ふたりが背負う過去に、泉は手を伸ばし知ろうとします。
現代において失われていくもの、残り続けていくものは何なのでしょうか。
すべてを忘れていく母が思い出さえてくれたこととは何なのでしょうか。
現代に新たな光を投げかける、愛と記憶の物語です。
昔の小説を今読んでも楽しめます。でもこの小説は今を生きている人に読んで欲しいと思いました。
認知症も結婚も出産も人の死もずっとこれからも不変の話題だと思うけど、今の時代の空気みたいなものが溢れている小説だと思います。
それは登場人物の仕事など日々過ごしていく物事への感じ方がとても今の時代に生きる人に近いと思うからです。
登場人物と私自身の立場がまるで違うのに共感がたくさんあって私にとって大切な一冊になりました。
小野寺史宜『まち』
江藤瞬一は尾瀬ヶ原が広がる群馬県利根郡片品村で歩荷をしていた祖父に育てられました。
高校卒業とともに上京し、引越の日雇いバイトをしながら荒川沿いのアパートに住んで四年になります。
かつて故郷で宿屋を営んでいた両親は小学三年生のときに火事で亡くなり、二人の死は、自分のせいではないかという思いがずっと消えずにいます。
人を守れる人間になれ――。
祖父や、父や、母が身をもって教えてくれたこと。
瞬一が様々な想いの中、人との関わりを通して成長していく物語です。
『ひと』が本屋大賞第2位に入り、夏には『ライフ』が出版されて話題になり、そしてこの『まち』も話題となっています。
今年は本当に小野寺史宜さんの小説の魅力を感じ続けた一年でした。
人が殻を破って前へ踏み出していく物語は本当に読んでいて背中を押されます。
読み終わって「私もがんばろ!」と思えて、私自身、節目節目で助けられました。特にこの『まち』は重い主人公の背景があって瞬一が繊細に感じていく様に胸が一杯になりました。
小川糸『ライオンのおやつ』
ひとりで暮らしていた雫は病と闘っていたが、ある日医師から余命を告げられます。
最後の日々を過ごす場所として瀬戸内の島にあるホスピスを選んだ雫は穏やかな島の景色の中で本当にしたかったことを考えます。
ホスピスでは毎週日曜日に入居者が生きている間にもう一度食べたいおやつをリクエストできる「おやつの時間」があります。ただ雫は自身が食べたいおやつを選べずにいました。
生きている限り誰にでも訪れる時に向けて、雫がいとおしい毎日を考えながら過ごしていく物語です。
ホスピスとは終末期ケアを行う施設のこと。
治療ではなく身体や心の辛さをやわらげる緩和ケアを行う施設として「ライオンの家」はあります。
死に向き合うというのはどういうことなのでしょうか。
今までの生を振り返るというのはどういうことなのでしょうか。
雫にとってすごく大切でいとおしい日々が綴られていて、読んでいてたくさん考えて、胸に残った物語でした。
今村夏子『むらさきのスカートの女』
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことを〈わたし〉は気になって仕方がありません。
「むらさきのスカートの女」の行動、言葉を異常ともいえる執着で観察しています。
〈わたし〉は彼女とともだちになるために〈わたし〉の職場で彼女が働き出すように誘導します。そしてまたその行動を観察し続けるのです。
狂気と紙一重の滑稽さを孕んだ中編小説です。
第161回芥川賞受賞作です。
むらさきのスカートの女は勿論、〈わたし〉も職場の人間も皆、個性があって気持ちの流れにはらはらしながらもついつい次へ次へ読んでしまいます。
むらさきのスカートの女の魅力と取り巻く狂気が面白いです。
学校の教科書にこういう小説があったら心情を推測する授業で色んな意見が出て面白いかもしれません。しかも先が気になって生徒が初めて買う小説になるかも。
確かに帯に書かれていた「いま、もっとも注目を集める小説家」という文面通り魅力的な一冊でした。
知念実希人『ムゲンのi』
若き女医が人智を超える奇病と事件に挑む物語です。
眠りから覚めない謎の病気イレスという難病の患者を3人も同時に抱え識名愛衣は悩んでいます。
祖母の助言により〈マブイグミ〉という不思議な方法で患者の内面を知っていく中で、患者と猟奇的殺人事件、少年Xの正体が繋がっていきます。
知念実希人さんは医師経験者で医療現場の小説が多く、『ムゲンのi』も医師が主人公の小説です。ただ世界観は読んだことがないような新しさ溢れる世界で、人の内面に潜り込むような不思議な世界が広がっています。
一人一人の患者の話にのめり込んでいる内に事件とか識名愛衣自身のことが浮かび上がってきて最後はもう一気読みでした。
一つの小説を読んで色々な世界へ飛ばしてくれるようなどっぷり浸かれる読書としておすすめです!
住野よる『麦本三歩の好きなもの』
図書館勤務の20代女子、麦本三歩のなにげなく愛おしい日々を描いた日常小説です。
麦本三歩はぼうっとしていて、食べ過ぎでおっちょこちょい、間抜けという他者評価です。
彼女の周りはそんな三歩にそれぞれの距離感で接していて三歩も周りの人たちに素直で自分らしく接していきます。
穏やかな日常というよりは麦本三歩の個性の彩りが眩しくて何でもない日常が特別に感じられるような小説です。
読んだ後に心地よさがある本です。
登場人物の砕けた感じが親しみを持ててついつい笑ってしまうような読書でした。
気楽に読めて明るい気持ちになれるような一冊です。
終わりに
案の定、なかなか選べず、入れてはやっぱり変えてみての繰り返しの10選でした。
今年はブログを始めたこともあってか、新刊に惹かれることが多く、色んな作家の作品に触れることができて新しい発見も多かったです。
あとハードカバーを読むのに慣れました笑
11月頃から仕事もハードになり、本は読んでも記事にできないことも多くありました。
ただやっぱり読書することも、それを伝えて共有することも、すごく自分にとって好きなことだと感じています。
今日で今年も終わり、明日から2020年とまるで実感が湧きませんが、今年以上に読書を楽しめればいいなと思うし願っています。
また今年は本を通してたくさんのいい出会いに恵まれたので来年もさらに充実させていければいいです。
そのためにも来年は今年以上に色んな面でがんばります!
今年もどうもありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。