鹿児島ゆかりの28人の作家や、鹿児島を舞台にした作品を多面的に紹介している「かごしま近代文学館」。
祖父母が鹿児島で生活をしていて、小さな頃は年に一度くらいのペースで遊びに行っていました。
遊びに行っていた時は、例えば桜島や知覧に連れて行かれることが多かったと思います。
それも楽しい思い出で、美味しいものを食べさせてもらって、時々、祖父母の時代のことを体験するような場所に連れていってもらって話を聞くことは私にとって大切な機会でした。
ただ鹿児島自体に興味があったのかと言われると、そこまでは思えておらず、祖父母が暮らしていて、父が学生時代に過ごした場所という認識以上のものはありませんでした。
以前ブログでも書きましたが、今年祖父母が続けて亡くなって、初めて鹿児島はどんな地域なのかに興味を持ち始めたのだと思います。
今月、祖父の四十九日で鹿児島に行きました。
前泊してとりあえず私が行きたい場所というものを調べてみました。それはいくつもあって到底自由な時間である半日ほどでは行き切れるわけではないのですが、まず絶対行ってみようと決めたのがこの「かごしま近代文学館」です。
鹿児島由来の作家を知ることは私が鹿児島を大好きになる入り口のような気がしたからです。
Contents
かごしま近代文学館の案内
営業時間 | 9:30~18:00(入館は17:30まで) |
休館日 | 火曜日(年末年始休み・臨時休館日あり) |
入場料金は大人300円、小・中学生150円です。
その他詳しい情報は上記ホームページを観て頂けたらと思います。
かごしま近代文学館を訪れての感想
文学館というとどのような想像をしますか?
もしかしたら資料がずらっと並んで順路に従って眺めるだけのようなものを想像するかもしれません。
しかし、この鹿児島近代文学館は例えば紹介映像があったり、各作家の著作の手書きポップによる紹介があったり、温かくて分かりやすい仕掛けに溢れています。
分かりやすくて親しみやすい導入があってから資料を眺めることができるので、知らない作家さんでも興味を持って眺めることができます。
私が入った時にも小学生のグループが入ってきて楽しみながら回っている様子がありました。私より年長者の作家さんに小学生が興味を持って楽しんで観ている姿はなんだか嬉しかったです。
私が一番、長い時間いて、本当にくらくらになってしまったコーナーが向田邦子さんのコーナーです。
どれくらいいたでしょうか。1時間以上、言葉を噛み締めながら、メモをとりながら今でも大切に思える貴重な時間を過ごさせてもらいました。
エッセイなどから抜粋した言葉などを交えながら向田邦子さんの紹介や歴史が綴られています。
真ん中には東京での住まいを模したソファとテーブルがあって、それを眺めながら向田邦子さんの留守番電話のメッセージをヘッドフォンで聴くことができるなどの仕掛けがあります。
実際の肉声を聞くと、文章としては以前から読んだことのある作家さんでしたが、ぐっと距離が縮まった気がしました。そのコーナーで過ごしている内に私が生まれる前に亡くなった作家ですけど、魅力を身近に感じ、その後、作品を読み返してみたい気持ちになりました。
それが先日投稿した『思い出トランプ』だったわけです。
そして今年、向田邦子生誕90周年ということで、今年になって向田邦子原作で角田光代さんと西加奈子さんで絵本を出版されたことも知り、すぐにamazonポチり。
展示コーナー内で、
母がこの「じゃんぼ」を好んだこともあって、鹿児島にいる時分はよく磯浜に出かけた。
海に面した貸席のようなところへ上り、父はビールを飲み、母と子供たちは大皿いっぱいの「じゃんぼ」を食べる。このあと、父は昼寝をし、母と子供たちは桜島を眺めたり砂遊びをしたりして小半日を過すのである。
(「細長い海」『父の詫び状』)
という引用の掲示があれば、すぐ検索してこのかごしま近代文学館を出たらじゃんぼを食べに行き、桜島を眺めに行きました。
じゃんぼ美味しかった!
でも我ながら影響されやすくてなんて単純。
温かい雰囲気と様々な工夫の中で作家を身近に感じ、その生き方に身を馳せることのできるコスパ最高の文学館でした。
時期によって様々なイベントや特別展が開かれているので、近所に住みたいと思えるような魅力ある施設です。
ちなみに2019年11月15日~12月15日までで「くにこのぐるり~向田邦子をつくったもの~」という特別企画展が催されるようです。
い、い、行きたい!!
先日投稿した『字のないはがき』の原画展もあるようです。
終わりに
法事があって今回訪れた鹿児島でした。
前日、このかごしま近代文学館に行き、天文館通をぶらぶらして、桜島をみながらじゃんぼを食べて、夜は父と黒豚、きびなご、鳥刺しを食べました。
美味しいものたくさんで景色もきれいな素敵な場所であることをしみじみ感じたわけでございます。
法事が終わって、祖父母の家に行き、荷物の整理をしました。もう床が陥没していて(祖父母が施設に入ってから3年くらいでシロアリによって)、人が住まなくなると家がこうなるのだと感じました。
色んな気持ちの上下がある中で感じたことは、今自分のことをさらに頑張ろうということと、また鹿児島に来たいということです。
向田邦子さんの言葉を借りるならば、私もキョロキョロ自分の手袋を探すような生き方を誇りに思いながら歩んでいきたいと思っています。