映画『蜜蜂と遠雷』を観てきました!
原作は本屋大賞と直木賞のW受賞を果たした傑作で、実写化は不可能だろうという言われていた小説です。
感想はというと一言で言って、
最高でした!
この気持ちを残しておこうと記事を書きます。
『蜜蜂と遠雷』の簡単なあらすじ・説明
近年、その覇者が音楽会の寵児となる芳ケ江国際ピアノコンクール。
自宅に楽器を持たない少年・風間塵16歳、かつて天才少女としてデビューしながら突然の母の死以降、弾けなくなってしまった栄伝亜夜20歳、楽器店勤務のサラリーマン・高島明石28歳、完璧な技術と音楽性の優勝候補マサル19歳。
天才たちによる競争が始まります。それは自らとの闘いでもあります。
天才たちが交わり何が起きるのか。
ここからネタバレ注意!
映画『蜜蜂と遠雷』の感想(ネタバレ)
栄伝亜夜
松岡茉優さん演じる栄伝亜夜。
彼女を中心に物語は回っていきます。風間塵との月明かりに照らされての連弾、マサルの練習を導く姿、それぞれ物語の見所でした。
音楽には恐る恐る関わるような不安定さを見せつつも明石の演奏や、塵、マサルとの関わりの中で音楽を楽しめていた情景が浮かんでくる変化には引き込まれました。
本選でオーケストラとの練習では鹿賀丈史演じる指揮者の小野寺(原作よりも厳かな雰囲気を纏っている)とのやりとりで演奏が止まってしまう場面ははらはらしました。
でも自分の身体の一部となっているような音楽と向き合い、ステージで出ていき、演奏中に小野寺が微笑む場面で涙が……。
なんでこんなに嬉しいのだろう。
映画序盤から演奏前手が震えていた栄伝亜夜の姿にかなり感情移入させられてたのだと思います。
栄伝亜夜の姿に夢中になっていたのだと思います。
栄伝亜夜のピアノ演奏曲のサントラで「春と修羅」は他の演奏者と聞き比べながら余韻に浸っています。後半の即興の箇所であるカデンツァはそれぞれまるで違います。
「おおらかで温かなカデンツァ」とは栄伝亜夜の演奏を聞いた原作でのマサルの評。最後の激しいパッセージまで含めて聴きごたえがあります。
風間塵
鈴鹿央士さん演じる風間塵。
天然さ溢れる天才そのものでした。その無邪気な姿は誰の心もするっと入ってきそうな愛らしさがあります。
栄伝亜夜と月明かりに照らされながら連弾するシーンはまるで姉弟みたいでした。
木製で音の出ない鍵盤を叩きながら練習する姿を見ていると、ただピアノを愛する一人の少年の姿そのもので彼の演奏シーンでは自然と応援してしまいます。
「春と修羅」のカデンツァは激しい。栄伝亜夜と比べるとその強さに驚いてしまいます。
客席が凍りついた。
風間塵の紡ぎ出したカデンツァは、すこぶる不条理なまでに残虐で、凶暴性を帯びていたのである。
絶賛する審査員もいれば否定する審査員もいる『劇薬』、風間塵の演奏曲が収録されたサントラはこちら。
マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
森崎ウィンさん演じるマサル・カルロス・レヴィ・アナトール。
栄伝亜夜とはこちらも姉と弟のような雰囲気。栄伝亜夜は風間塵ともマサルとも姉のような雰囲気を出しつつ、音楽との向き合い方としては一番悩んでいるから不思議でした。
栄伝亜夜や風間塵と比べるとコンクール奏者として安定した天才に見えますが映画では小野寺とのリハーサルがうまくいかない場面が印象的でした。
あのフルートが入る場所の問題はマサル側の成長によって解決したのでしょうか。
師匠のナサニエルとは二次予選後に少しの叱責のような場面がありましたが、カデンツァを聴いたナサニエルは嬉しそうでしたね。
とてもマサルが期待され、愛されているのが伝わる場面でした。
「春と修羅」のカデンツァは、
オクターヴでのパッセージと、複雑な和音を駆使した超絶技巧のカデンツァ。
音楽を聴くと素人の私でも個性が(何となくでありますが)伝わってきます。
それぞれの解釈と個性が演奏に出るというのは面白いですね。
マサルの演奏曲が収録されたサントラはこちら。
高島明石
松坂桃李さん演じる高島明石。
誠実な人柄がよく分かる人物で好感が持てました。映画の中では栄伝亜夜に次いで、葛藤が描かれているように思えました。
第二次予選で落ちてしまったのは本当に残念でした。原作を読んでいて知っていたはずなのにとても落胆してしまいました。
それは「春と修羅」の演奏シーンが素晴らしかったからだと思います。
あめゆじゅとてちてけんじゃ
宮沢賢治の詩を取り入れたフレーズの発音が鳴り響きます。
演奏を聴いての栄伝亜夜の表情の変化や聴衆の拍手を聴いて、今までの悩んでいた高島明石の姿を観ていた分嬉しかったです。
ただ落ちてしまったのが残念でしたが最後に審査結果の表示もあったので救いまで描かれていましたね。
作曲者の菱沼忠明先生が今大会で一番良い「春と修羅」を演奏したと選んだ菱沼賞受賞が高島明石の演奏でした。
高島明石の演奏曲が収録されたサントラはこちら。
終わりに
小説と映画を比べることは野暮だと思いますがそれぞれの良さはあると思います。
映画版は映画版で集中して映画に没頭できるくらいの尺でまとめられていて私は最初から終わりまで本当に楽しめました。
ピアノの音は涙を誘います。興奮作用でもあるのでしょうか。
物語があって演奏される楽曲に気分を何度も上げられながら観ることができました。
先週記事にもしましたがスピンオフの短編集も出ているので映画を観てよかった思われた方はこちらもおすすめです。楽しめますよ。