原作・向田邦子、文・角田光代、絵・西加奈子の絵本!
向田邦子さんの名エッセイが大人気作家の手によって絵本になりました。
「字のない葉書」は教科書にも載っている名作です。
戦争中の向田さん一家の小さな妹と、いつもはこわいけれど愛情深いお父さんのエピソードを綴った感動の実話です。
今年は向田邦子生誕90周年ということで、この絵本は勿論、かごしま近代文学館で「くにこのぐるり~向田邦子を作ったもの~」という特別展が11月15日から行われる予定であるなど盛り上がっております。
先日『思い出トランプ』の記事でも触れましたが向田邦子さんは38年前に飛行機事故で亡くなられています。
でも私は今月鹿児島に行ってかごしま近代文学館に常設されている向田邦子さんのコーナーで長く過ごして、再度『思い出トランプ』を読んでみるとその瑞々しい感性にがしっと心を掴まれたような気持ちになっています。
まるで風化などしない文章の魅力があります。
この絵本のエピソードは何度読んでも泣けてしまうような大切なエピソードが角田光代さん、西加奈子さんによって素晴らしい絵本となって描かれています。
字のないはがきのあらすじ
せんそうが はげしくなって そかいしていくこどもたち。
いちばん ちいさないもうとも とうとう そかいすることに なりました。
おとうさんは たくさんの はがきをわたして、「げんきな日は、はがきにまるをかいて、ポストにいれなさい」といいました。
ちいさないもうとは えんそくにでもいくように、うれしそうに、しゅっぱつしましたが……。
~原作「字のない葉書」について~
原作は、戦争時代の向田さんの家族との思い出を綴ったエッセイ(『眠る盃』所収、1979年、講談社)。お話に登場する「ちいさないもうと」は、向田さんのいちばん下の妹・和子さんのこと。絵の中のたんぽぽは、「ちいさないもうと」を象徴しています。
ここからネタバレ注意!
字のないはがきの感想(ネタバレあり)
すばらしい絵本が誕生したのだと思いました。
向田邦子さんや角田光代さん、西加奈子さんを知らなかったとしても心に残る一冊だと思います。
葉書に書かれていく〇の大きさや色使い、そして×……。
戦時中の厳しさを背景に、小さな妹と妹を気に掛ける家族の姿はずっと伝えていかなければならない歴史だと思います。
私自身にとって戦争は生まれる前の出来事でした。戦争はいけないというのは勿論なのですが、厳しさの中に浮かび上がる人の温かさというのは忘れてはいけないものなのだと思います。
普段は厳しいお父さんははだしで妹を迎えに行く場面は泣けます。
手紙に〇をつける場面はよく知られた場面ですが絵として物語を追うとまた違った感慨深さります。
西加奈子さんの絵、とてもこの物語に合っています。
角田光代さんも西加奈子さんも大好きな作家ですが、この向田邦子さんの物語を絵本として作り上げたこの作品を読んで、すごいと思い、そしてさらに好きな作家さんになりました。
あぁ、本当、よかった。
終わりに
この三名の名前が並ぶということが凄すぎて大興奮でした。
そしてかごしま近代文学館に行くまで知らなかったという失態!本当に今このタイミングで知ることができてよかったです。