直木賞作家でもある白石一文さんの問題作!
白石一文さんは直木賞を受賞した『ほかならぬ人へ』を書いた作家さんです。
私は十年以上前に「村上春樹に似てると思うんだよね」と友人に勧められて『一瞬の光』を読み、村上春樹っぽさはあまり感じることはできなかったのですが(笑)「面白い!」と思って注目してきました。
そしてこの『プラスチックの祈り』ですが、身体がプラスチック化していくという奇妙な小説です。
その分量たるや1400枚(400時詰め原稿用紙換算)!
「何、この話?」というところから「面白い!」という感想まで一直線で繋がっている作品です。
あらすじ
作家・姫野伸昌は妻の「死」を境に酒浸りの毎日を送っています。
そんな生活の中で突如、身体のあちこちがプラスチック化する不可思議な現象が起き始めます。
不可思議な現象と原因を自身の過去から探そうとしても混乱するばかり。
自分の記憶にも改竄や欠落があることに気づいていくからです。
過去がなぜ欠落、改竄されてしまっているのかも含めて自分自身に潜んでいる謎を解き明かしていく新感覚を与えるようなミステリーです。
プラスチックの祈り感想
ずっしり1400枚(400字詰めの原稿用紙換算)です。
内容も帯にあるのですが「迷宮に彷徨うが如く、この物語に魂を奪われるだろう」作品で1冊読むのにかなりの時間をかけました。
自分自身の記憶を辿るミステリーに不可思議なプラスチック化という現象が絡んで先が全く読めませんでした。
はじめ3、4時間くらい集中して読んで、読みやすいし、それぞれの場面は面白くて飽きないのだけど、このままこの分量続くのかなと不安な気持ちも少しありました。
でも半分ほど過ぎて、少し物語の本質、核心に迫ってきて惹きつけられます。
さらに謎が広がる部分もあり、しかも私自身のスペックの問題かもしれませんが、人間関係が複雑になり混乱してきて、「もう、なんなの」と休憩を挟みながら読み進めました。
読み終えて、気持ちの中で、すごい!と思う部分と確かに問題作だ!という部分が残りました。
作家が主人公ということもあり、作中の人物と作家を重ねるつもりはないのですが、ついついすごいペースで書き続ける白石一文という作家の凄さにも触れたような気がしてしまいました。
プラスチック化ということ以外は本当にリアルで、出てくる街並みは固有名詞も多くその街を実際に即して詳細に書き込まれています。
特に博多駅まわりは昨年11月にぶらぶらしたこともあって、わかるわかる、と面白く描写を読みました。
その他の街の描写の書き込みもイメージできるものが多くて、行ったことない駅名でも行ってみたいと思わせる場所もありました。これが巡礼というやつですね。
私が感じたのは、文章が読みやすいですし、最後にちゃんとそういう物語だったんだと思わせてくれる話なので、
読むと決めた方は安心して(?)この問題作っぷりを楽しんで欲しいと感じる一冊でした。
プラスチックの感想を読後、感じた〇〇
今までの白石一文さんの作品を想像して読んで私的に意外で驚きました。
でもそういう新鮮さが面白かったです。
冒険というか、イメージを打ち破るような作品を積み重ねてますますその作家にのめり込んでいくだろうと私は思います。
凄いペースで出版しているような作家さんですが、次の作品も既に早くこないものかと楽しみです。
ただまずは読書の時間を確保できるようにうまく自分の生活を回していきたい。
年度初め劇的に忙しくてへこむ。