羽田圭介さんの最新作、ポルシェを購入した太郎の物語!
本作の帯には羽田圭介さんの写真が載せられていて、テレビにもよく出演されていることもあり、最も顔が売れている作家の一人と言えるでしょう。
作品もインパクト大の作品ばかりで「羽田圭介さんが好き」とはまるファンが私の身の回りにも多数います。
帯の紹介ではあの堀江貴文氏の絶賛コメントが載せられています。
すべての欲望を満たすのに必要なものはなにか?
その答えは、この小説に書かれている。
赤裸々な欲望が綴られている『ポルシェ太郎』にくらくらです!
あらすじ
35歳。起業しポルシェを購入した太郎の話です。
欲望とそれを叶える為の危ない橋を渡りながら太郎は満たされ、さらに渇望し、時には虚しくなりながらハードボイルドな世界で生きていきます。
自慢の愛車で向かうのは欲望か、死か、ハラハラドキドキ、そしてリアルな30代の気持ちを描いた物語です。
ここからネタバレ注意
ポルシェ太郎の感想(ネタバレあり)
太郎がはまったポルシェ
太郎はポルシェに心酔します。
もっと具体的に言えば、
ポルシェ911カレラカブリオレです。
およそ1500万円!
そして太郎が心酔しているのに同じように共感してくれる人は少ない。
そういう描写がいくつもあるのも面白いです。
著作権の絡みとか難しくて画像の転載はしませんがポルシェ911カレラのシルバーは検索してみるとたくさんの画像が出てきてイメージして読んでみると面白いと思います。
太郎は後半の場面でポルシェの魅力に想いを馳せます。
ポルシェには二つの時間が流れる。乗っていない時に思うポルシェと、乗っている時のポルシェは違う。どちらのポルシェも太郎は好きだ。シルバーのカエルくんと、離れたくない。終わってしまうのは嫌だ。自分でも驚くことに太郎は涙ぐんでいた。
ポルシェに対する並々ならぬ熱が伝わってきますね。
だからこそのポルシェ太郎なのだと思います。
ポルシェ太郎って何?!
主人公の大照太郎がポルシェを買います。
だからポルシェ太郎。
タイトルもストレートで面白い。
上記した通りポルシェを並々ならぬ熱で愛する太郎の物語。
でも、ポルシェ太郎って。
確かにポルシェ太郎の話なのだけれど笑
でもこの小説でポルシェと太郎の繋がりは笑いだけでは片付けられない深いものがあります。
ポルシェを購入し運転している時の太郎はそれまでの自分よりも自信を持ち堂々と動いているように思えます。
裏社会に片足を突っ込んでみたり、仮想通貨など大きく勝負に出ようとする姿はポルシェあってこそでしょう。
赤裸々に描かれた欲望が魅力的な今作品は読み終わって考えてみると確かに、
太郎の話でもなく、
ポルシェの話もなく、
ポルシェ太郎の話でした!
こうやって文字で書いてみると笑ってしまいますが。
ポルシェ太郎の魅力
羽田圭介さんの小説はお金の話とか物欲とか性欲とか虚栄心とか人に話すと時々下品にうつってしまいそうな気持ちを赤裸々に描くのでついつい気になって読んでしまいます。
太郎の欲望の形が分かりやすいです。
金銭欲も物欲も性欲もよく分かりますがここまで強くてむき出しの人間がいるのでしょうか。
むき出しだからこそ分かりやすくて太郎とは全然違う人間でもどこかで共感してしまいます。
そして何よりもハラハラドキドキの物語の展開です。
欲望を叶えるために裏社会にまで足を突っ込む太郎ですが、そこには死の予感すらある世界です。
暴力シーンは残酷で見ていて読むのが苦しくなるような描写もあります。
また太郎と親しい瑞恵に何かあったのではないか、と最悪の想像をする場面がつらかったです。
私はそういう展開が終わりに待ち受けているのなら読むのがしんどいと思いながら読み進めました。
死や不幸と隣り合わせの物語展開なので先が気になって気になって気を緩められない展開と太郎の気持ちの揺れ動きは面白くていつのまにか読み終わっていました。
そんなスリルある展開の中で出てくる太郎の心情が、自分は30代のもうおじさんだとかいやいやまだいけるとかそういう微妙な不安と、大きく自分を見せようとする見栄みたいな共感まではいかないけど理解はできる気がする部分が多くて気になるのです。
さらに合わせてあと起業した時の税金のかかり方とか抜け道とか妙にリアルっぽく書かれていたり、ハゲに効く薬とか具体的な固有名詞だったり、普段飲み会で興味を引くようなワードが散りばめられていて笑いながら物語に入ってしまう。
笑いありスリルありそしてなるほどと思える豆知識があったり色々な方向から気になる要素が湧き出てくるので面白い。
色々な新しい面白さがあって読後嬉しく感じました。
ポルシェ太郎の感想まとめ
会社の存続を考えてポルシェを売却した決断は正しいと私は思いつつも違和感はありました。
ポルシェ太郎はどうしようもない男ですがそれくらい面白い男だったからです。
だから私にとってポルシェ太郎から普通の太郎に戻るという面白みのない選択に感じましたが売った後もまたポルシェを買い戻したいと考えている太郎に嬉しくなりました。
ポルシェ太郎はどうしようもありませんが欲望があるから頑張れる部分は大きいと思うので太郎がびくびくしながらもこうしたいああしたいと駆け回る姿は応援してしまいました。
それにしてもインパクトある小説でした。最後の最後まではらはらしつつ、ポルシェに拘る姿に笑いつつ、少し共感しつつ、あっという間の読書でした。
羽田圭介さんの作品は時間が経っても内容を思い出せるインパクトの強い本ばかりです。
本作品『ポルシェ太郎』も間違いなくずっと内容を思い出せる本だろうと思います。
それはもしかしたら一つの素晴らしい本の指標の一つなのかも。