いよいよ2019年本屋大賞の発表日まで1か月を切りました。
1年で最も盛り上がる本のイベントの1つですので私も本当に楽しみです。
今年のノミネート作品も魅力的な小説ばかりでしたので結果もそうですし、結果発表後にさらに作品に注目が当てられるのが嬉しいし楽しみです。
さて、今回はその本屋大賞について楽しみが深まればと思い、どういった賞なのか、現在のノミネート作、過去の受賞作を含めて書きました!
Contents
本屋大賞とは?
売り場からベストセラーを作る!
本が売れない時代と言われる昨今、出版業界を現場から盛り上げていこうと設立された賞です。
文学賞というと最終選考で選考委員が検討し受賞が決まるイメージですが、この本屋大賞は上記した「現場から盛り上げていこう」という賞なので、
新刊を取り扱っている書店員の投票だけで選ばれる賞です。
2017年12月1日~2018年11月30日の間に刊行された日本の小説が対象で一次投票、二次投票を経て大賞が決定されます。
2019年本屋大賞発表日は4月9日です。
ノミネート作品の順位が発表されます。
昨年の受賞作は辻村深月『かがみの孤城』でした。
2位以下についても帯に本屋大賞の順位が記載されるなど販促効果大のステータスとして注目されます。
さて今年の受賞作は?
2019年本屋大賞ノミネート作品
1.『愛なき世界』三浦しをん
あらすじ:洋食屋「円服亭」店員の藤丸は住み込みで熱心に働いています。
藤丸は円服亭での出前の配達をきっかけにT大理学部で植物学研究室を訪れます。
そこで植物の世界に没頭する面々と出会い、1つの恋をするという始まりです。
植物と向き合い試行錯誤し失敗しこれ以上ないくらいに落ち込みながらも研究に打ち込んでいる人たちの姿が熱く描かれています。
そして洋食屋で頑張る藤丸が研究室のメンバーとは違った立場でありながらもそんな研究室の人たちと植物そのものに興味を持ち関係を築いていく物語です。
『舟を編む』、『風が強く吹いている』、『まほろ駅前多田便利軒』など数多くのヒット作を生み出している作家・三浦しをんさんの熱くて真っすぐで時々笑える物語!
植物の世界が題材というのも新しくてどんな展開になるのかどきどきしながらページをめくって楽しむことができました。何かに打ち込む人間はやっぱり素敵!
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2.『ある男』平野啓一郎
あらすじ:弁護士の城戸はかつての依頼者である里枝から「ある男」について奇妙な相談を持ちかけられます。
里枝には「大祐」という夫がいました。ただその「大祐」は不幸な事故で命を落としました。
悲しみに打ちひしがれている里枝は命を落とした「大祐」が全くの別人という事実を知ることになります。
では「大祐」として過ごしてきた「ある男」は何者なのか、城戸を中心に追いかけていく話です。
著者である平野啓一郎さんは2016年刊行『マチネの終わりに』が二十万部を超えるロングセラーとなり、さらには今年の秋に福山雅治さん、石田ゆり子さん主演で映画化されることで今でもなおその作品は脚光を浴び続けています。
この『ある男』はそんな『マチネの終わりに』から2年経ち、刊行された長編小説です。
どっぷり読書の世界に漬かれる重厚な物語です。深いところまで潜るようにして伝わる優しさや悲しさや愛しさを感じられて読み終わった後、「よかった」と息をついてしまうような本でした。
3.『さざなみのよる』木皿泉
著者名の「木皿泉」とは和泉務さん(夫)と鹿年季子さん(妻)によるなんと夫婦脚本家の名前です。
テレビドラマの脚本家としても有名で手掛けた「野ブタ。をプロデュース」や「Q10」は聞いたことのあるタイトルだと思う人も多いでしょう。
過去の本屋大賞でも『昨夜のカレー、明日のパン』は2014年本屋大賞第2位となっています。
色んな人の死を含めた存在の影響を受けて生きていることをしみじみ感じてしまうような物語です。
4.『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ
あらすじ:森宮優子、17歳。
義母継母が変われば苗字も変わります。
彼女には3人の父親、2人の母親がいて、血の繋がらない親あの間をリレーされ、四回も苗字が変わっています。
だが、彼女はいつも愛されています。
そんな森宮優子の日々を描いた感動作です。
瀬尾まいこさんは私の中で読後感の温かさ部門で断トツ一位の作家さんです。(あくまで私の中でです)
今まで友人に勧めた回数が1番多い作家でもあります。
この作品も読後に上を向いて歩きたくなるような背中を押してくれる小説です。
3人の父親、2人の母親がいる物語ってなかなか想像もつきませんよね。唯一無二の設定から紡がれる優しい物語は読み終わってやはり感動しました。
5.『熱帯』森見登美彦
6.『ひと』小野寺史宜
「ひと」との繋がりの良い面、悪い面を通してデリケートな過去を持った主人公の聖輔の日々が描かれています。
主人公聖輔の姿はとてもいそうで、動いた感情から出るセリフは私自身共感ができる描写ばかりでとても近くに感じられます。
感情も舞台(砂町銀座)も私達の周りにありそうな話で、だからこそ私のように深く刺さる人も多いに違いないと思える一冊です。
7.『ひとつむぎの手』知念実希人
あらすじ:大学病院に勤める医師・平良を中心に繰り広げられる医療ミステリーです。
平良が研修医3人の指導を任されるところから話は始まります。
平良には研修医との軋轢や、医局内の権力争い、謎の怪文書、平良自らの出世レースなど様々な謎や頭を悩ませる問題があります。
謎や問題の解決に取り組みながら医師として、人として1番大切なものを見つけていく人間模様が描かれている話です。
知念実希人さんは医師としての勤務経験を持つ作家さん。医療現場をテーマとした著書も多数あります。
一つ一つの文章が勿論フィクションであると分かっていながらもこういうものなのかと思ってしまうような説得力です。
命を扱う医療現場で生まれる緊張感と先へ先へと読ませる展開にはまってしまいます。
8.『火のないところに煙は』芦沢央
帯には「怖すぎる、でも面白すぎて止められない―」の文言。
戦慄の暗黒ミステリという文言もあり、期待も高まり読んでみると……帯の通り恐怖!でも先が気になる。読み始めたら引き返せない力のある作品でした。
9.『フーガはユーガ』伊坂幸太郎
あらすじ:優我はファミレスで1人の男に語り出します。
双子の弟の風我のこと、父親からの虐待を中心に幸せではなかった子供時代のこと、そして彼ら兄弟だけに備わった特別な力のことをです。
風我と優我のルーツから現在に繋がっていく不思議で切ない物語です。
語られる1つ1つの話はユーモアがあって独特のセンスがあって短い場面ばかりなんですけど読みたい読みたいとページを捲らさせます。
現在へと話が繋がった時の驚きと納得とさらにページを勧めていきたい衝動は、ただの「不思議な話」や「重い過去を持った兄弟の話」ではなく、本の魅力を存分に伝えてくれる力となってラストシーンへと運んでくれます。
伊坂幸太郎さんの一年ぶりの新作です。過去に本屋大賞の受賞歴(『ゴールデンスランバー』もある作家さんです。
著作の映画化も多数されていて日本で最も知名度のある作家の中の一人と言っても言い過ぎではないと思います。それくらい幅広い世代の方に読まれている印象です。
この『フーガはユーガ』もあっと驚くような鋭い伏線に、冗談みたいなわくわくする会話、そしてしみじみと登場人物について考えてしまうような深さのある作品で一年ぶりに「やっぱり伊坂さんの小説面白い」と嬉しくなってしまう作品でした。
10.『ベルリンは晴れているか』深野野分
『このミステリーがすごい!2019年版』で第2位! 直木賞候補作!
間違いなくどの角度から眺めてみても昨年を代表する作品の一つです。
私もどっぷりはまりました。
スケールの大きさという短い言葉を使ってしまいますが理解するには大きすぎる物語の世界を感じさせてくれた物語でした。
終わりに
全ノミネート作品を上げてみましたがそれぞれ違った魅力があって甲乙つけがたいですよね。
この本屋大賞をきっかけに読書好きが増えて、出版業界が盛り上がれば最高です。
どの本を買おうか迷った時に本屋大賞受賞作を読むという入り口は間違いがない選択だと思います。
4月9日の受賞作発表に向けて昨年を代表するこのノミネート作品を読んでより楽しんでその日を迎えるのも面白いかもしれません。
受賞前も受賞後も盛り上がって読書、楽しんでいきましょう!