小説

深緑野分『ベルリンは晴れているか』【2019年本屋大賞ノミネート作品。圧倒的スケールの歴史ミステリー】

2019年本屋大賞ノミネート作品。

2019年本屋大賞特集!【全国書店員が選んだいちばん!売りたい本】いよいよ2019年本屋大賞の発表日まで1か月を切りました。 1年で最も盛り上がる本のイベントの1つですので私も本当に楽しみです。 ...

『このミステリーがすごい!2019年版』で第2位! 直木賞候補作!

間違いなくどの角度から眺めてみても昨年を代表する作品の一つです。

帯には「ヒトラー亡き後、焦土と化したベルリンでひとりの男が死んだ―」とあります。

読む前から内容の重さを感じますね。そして確実に私の知らない世界へ浸らせてくれそう。

読んでみれば大きく私の中に残る読書となりました。

あらすじ、描かれている世界

1945年7月、ドイツが戦争に敗れ、米ソ英仏の四ヶ国統治下に置かれたベルリンが舞台です。

17歳ドイツ人少女アウグステの恩人が毒により不審死を遂げます。

アウグステは疑いの目を向けられつつ、恩人の甥に訃報を告げるために旅立ちます。

物語はその甥を探す章とアウグステの終戦までの生い立ちが描かれた幕間の物語が交互に進みます。

アウグステも含め、様々なルーツや思想を持つ人々が時代にしがみつくように生きて絡まり合っていく圧倒的スケールの歴史ミステリーです。

描かれている世界は、

  1. ヒトラーが台頭する前
  2. ヒトラーが台頭した後
  3. 終戦後

で人々のポジションが大きく変わります。

ざっくり書くと、

戦中はアーリア民族を中心に据えた人種主義と反ユダヤ主義を掲げたアドルフ・ヒトラーが首相としてドイツを牽引します。そのため、ドイツ民族でも障害者やナチ党に従わない政治団体・宗教団体について迫害されるような風潮がありました。

人種主義や反ユダヤ主義を崇拝して推し進めると評価が上がり、逆に告げ口でもどんな形であれそれに対して文句を言ったことが明らかになると反社会的と見做されて罰せられる時代です。

ただ③の戦後については戦勝国統治となり、戦中で良しとされた思想は一転します。

つまり物語の中心となる1945年7月のドイツには戦争の傷跡が大きく残り、人々の気持ちには混乱と不安に満ちています。そんな舞台での物語です。

1945年のドイツが舞台なので馴染みのない名前や言葉が出てくるので慣れるまで多少読むのに時間はかかりました。

でも巻頭に人物名をまとめたページや終戦前後に分けられた舞台となる地域の地図が載せられているので分からないということはありません。

ここからややネタバレ注意。

ベルリンは晴れているかの感想(ややネタバレあり)

それぞれの時代を生きる人々の姿や考え方は読んでいるだけでずしりと残ります。

栞を挟んで読書を中断しても頭の中で本の中の世界や雰囲気が残っていました。

重くぼーっとする感じ。

話の中には辛く悲しい描写もたくさんあります。うきうきしながら読み進めているわけではないのに空き時間にすぐ本を手にとって続きを読んでしまう。

ラスト、交互に描かれた話が繋がります。

ミステリーの最後に繋がる瞬間の面白さは格別ですね!

真相が明かされて読み終えると嘆息、胸が一杯になりしばらく何もせず本を見つめていました。

それから頭からぱらぱらページを捲ってこういう話だったんだと面白さを噛み締めました。

このような存在感のある物語に触れると、人の人生はほとんどの場合100年足らずで終わってしまうけど、繋がりがあって今生きていることを意識します。

私の生きた内容も時代の一部となって繋がっていくんですね。だからなんだというわけではないけど、物事の見方が少し変わるような気持ちになっています。

終わりに

どっぷりはまりました。

直木賞受賞作の『宝島』とも時代としては被っていますね。沖縄の物語とベルリンの物語。

どちらにしても歴史の中で生きる私達にとって知っておくべき、事柄だと思います。

私達が生きた世界が文化の伝達となって歴史として死後も続いていくように私達も歴史を受け取ることは大切だと思います。

生きる意味なんて考える時はもうほとんどありませんが、繋がりがあるからこそ、大切に今を生きられる。

スケールの大きさという短い言葉を使ってしまいますが理解するには大きすぎる物語の世界を感じさせてくれた物語でした。

読書に浸かって、読後残る小説を読みたい人に勧めたいです。

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一蔵とけい
一蔵とけい
社会人の本好きです。現在、知的障害者の支援施設で働いています。 小説を読むことも書くことも大好きです。読書をもっと楽しむための雑記ブログを作りたいという気持ちで立ち上げました。

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