夢枕獏×松本大洋のコンビで描かれる絵本です!
大人の目線から目を引く絵本が多くなってきているように思えます。
先日紹介した『翔んで埼玉』原作で漫画家の魔夜峰央さんの絵本や少し前ですがキングコング西野亮廣さんの絵本も大ヒットして話題になりましたね。
大人が読みたいとも思える絵本。
私自身、大学時代に小学校の朝のホームルーム前に絵本読み聞かせをさせてもらったり、大学地域の子ども会で自作の読み聞かせをしたこともありました。
子ども達に読みたいなぁという絵本と自分が読むために持っておきたい絵本の距離がとても近くなっています。
それは様々なジャンルで活躍されている著名人が絵本というジャンルに挑戦しているからこそだと思います。
そして今回紹介する『こんとん』。
『陰陽師』や『キマイラ』などの著作で有名な小説家の夢枕獏さん。
『鉄コン筋クリート』『ピンポン』などで有名な漫画家の松本大洋さん。
鼻血すら出てしまいそうな豪華コンビで、しかもそんな著者名の豪華さなど忘れてしまうくらい内容も素敵な絵本です。
あらすじ
中国神話に登場する怪物「渾沌(こんとん)」の伝説を夢枕獏さんが新たな解釈で物語り、松本大洋さんのいとおしくなってしまうような絵で描いた絵本です。
6本の足と6枚の翼を持つが目も耳も鼻も口もない「こんとん」のもとに南の海の帝と北の海の帝がやってきて、こんとんに2つの目、2つの耳、2つの鼻の穴、口の計7つの穴を作ってやることにする話です。
ここからネタバレ注意
こんとんの感想(ネタバレ)
こん
とん
こん
とん
言葉の意味だけではなくてリズムやその音の響きも絵本の雰囲気を感じさせてくれる一冊の絵本です。
そして絵も「こんとん」としていて、
「なぞめいていて、いとおしい、ものいわぬもの、こんとん。」
を一冊の絵本、隅々全てから感じることができます。
絵本ってまるで無駄のない媒体なのかもしれない。
そんな風にまで感じさせてくれました。
内容については考えさせられます。
つかみどころのない「こんとん」はいつも空を見上げて笑っています。
そして帝たちが穴をあけて「目」と「耳」、「鼻」と「口」を作ると、
こんとんは死んでしまいます。
じぶんの目でみる
きく
かぐ
じぶんの口でかたる。
絵本で語られているようにそれはとてつもなくたいへんなことなのです。
私達が日常何気なくしている一つ一つの動作がたいへんなものなのかもしれないし、
自分の行動から成る一つ一つの見せるもの、聴かせるもの、かがせるものは受ける他人にとって大きなものなのかもしれません。
中国神話についてまるで詳しくはありませんし、絵本に答えを出すものでもないと思います。
ただ読み終わって深く感じ入ることのできる本でした。
そこに存在しているだけで空を見上げて笑っている「こんとん」が
私も好きです。
こんとんを読んで最後に言いたいこと
だれでもないからなんにでもなれる「こんとん」の話。
たくさん読みたいし、子どもがいれば読み聞かせしたくなるような本。
子ども達はこの本を読んで何を思うのでしょう。
勝手に目や耳などを作った人間達が怖くなるのでしょうか。
死んでしまったこんとんをかわいそうに思うのでしょうか。
得体のしれないこんとんを恐ろしく思うのでしょうか。
でも何度か繰り返し読んでいく内に、
ただ空を見上げて笑っているこんとんを好きになって、
子ども達も笑うことが素敵なことだと感じていくのだろうなぁ。
私は静かな気持ちで絵がある分ゆっくりと各ページを眺めながら、そうだよなぁとか言いながら読み終えました。