本屋大賞ノミネート作品。
小説の読後感は特別なものがあると私は思っています。
それは文字から場面が頭の中で展開されるのでストーリーや登場人物の心情が心にストレートにぶつかるから……とあくまで個人的に思っています。
読後、重く考えさせられる小説もあるし、大笑いして明るくなれるものもあります。
そして瀬尾まいこさんはそんな読後感ジャンル別ランキング(※私個人調べ)の温かさ部門で断トツ一位の作家さんです。
今まで友人に勧めた回数が1番多い作家でもあります。
読んだ後に前向きになっているような友人がいたら勧めた私自身も嬉しいわけで。
著者は長く中学校の国語教師を務めていてそのせいか著作の中で学校での人間関係についての描写が多いです。
これは勝手な想像ですが読者として生徒も想像に入れて描いているのではないかと感じます。
私はかなり昔ですが中学高校国語の国語教員免許をとるために大学に通っていたので(免許はとったが教師になってはいません)、それで親近感を覚えて出会った作家だった記憶があります。
物語の着地点がよく考えられている気がして、しかも色んな設定の小説があるにも関わらず読み終わってほんわかと温かい気持ちになっていて大好きな作家の一人となりました。
そんな瀬尾まいこさんの唯一無二とも言える設定で描かれた2018年を代表する小説です。
Contents
あらすじ
森宮優子、17歳。
義母継母が変われば苗字も変わります。
彼女には3人の父親、2人の母親がいて、血の繋がらない親の間をリレーされ、四回も苗字が変わっています。
だが、彼女はいつも愛されています。
そんな身近な人が愛おしくなる感動作です。
ここからネタバレ注意!
そして、バトンは渡されたの感想(ネタバレ)
父親と母親の多さは重苦しい話を想像してしまうかもしれませんがすべての家族が優子に暖かく優しくて愛情溢れる話になっています。
ただ優しいだけじゃなくて学校では友人関係の問題があったり恋愛があったり勿論家族関係で悩むことがあったりする中で温かさが残ります。
このタイトルの『そして、バトンは渡された』という意味が読後よく分かりました。
優子という一つの宝物を皆で大切に繋いできたのです。
森宮さんも梨花さんも泉ヶ原さんも水戸さんもそれぞれ皆まるで違う人間で価値観も違うのに優子については大切なバトンとして繋がれていく。
血が繋がっていようと繋がっていないとしても。
私は思い切り新しい優子の父のような感情移入の仕方で小説を読んでいたので早瀬くんと優子の恋人関係については簡単に認めるわけにはいかない心持で森宮さんと親友になれる勢いでした(笑)
私自身、子どもはおろか、結婚もしていませんが。
でもそれは小説の世界が優子に温かくて、それに飲み込まれたからではないかなと勝手に解釈しています。
どんな感情移入でも解釈でもラストの場面で「よかった!本当によかった!」と思えて感動してしまいました。
終わりに
ちょっと変わっていたって、普通じゃないって思われたって、それよりも今自分の周りにいる大事な人をちゃんと大切にしようと思います。
ちゃんとです。
そういう気持ちがそれこそバトンみたいな繋がっていって、いくつもの温かい人間関係ができてくればいいですね。
本屋大賞のレビュー三作目ですが、さすがにまず「面白い」と言える作品ばかり。でも色が違うから感想書いていても面白いです。