2019年本屋大賞ノミネート作品です!
著者の森見登美彦さんは『夜は短し歩けよ乙女』、『ペンギン・ハイウェイ』、『聖なる怠け者の冒険』など味わい深い世界観でたくさんの熱烈なファンを持っている作家さんです。
特に『夜は短し歩けよ乙女』が発売されて日に日に話題になっていく中で、私の周りでも森見登美彦ブームが激しくて本の話題となれば『夜は短し歩けよ乙女』というくらい強烈で印象に残っています。
文章も言葉選びに独特のセンスがあって読んでいて楽しくなるような作家さんです。
今回本屋大賞にノミネートされた『熱帯』も個性ある独特な魅力を感じた作品でした。
Contents
あらすじ
始めに森見さん本人が登場して次回作の締め切りに追われる生活の中でふと昔読んだ『熱帯』のことを思い出します。
『熱帯』の不思議な世界観に惹かれながらもこの本は読み終えることなく森見さんの手元から消えてしまいました。
あの本の結末は何だったのかと考えていると友人の誘いで参加した「沈黙読書会」でその「熱帯」を持つ若い女性と出会う始まりです。
女性の話から始まり派生していって誰も読み終えたことのな小説『熱帯』の謎を解き明かすために、『熱帯』に魅了された人々が奔走します。
『熱帯』の謎を解き明かすために活動する秘密結社「学団」、謎を含んだ本を持ち寄り、その謎について語り合う「沈黙読書会」、移動式古本屋の「荒波書房」。巡り巡って『熱帯』の世界に飲み込まれていく話です。
終盤、「そういうことなの?」と思わず言ってしまいそうな驚きの世界観が広がっています。
ここからネタバレ注意。
熱帯の感想(ネタバレ)
始めに森見登美彦さん自身が登場して驚きました。
早々に『熱帯』が登場して物語のキーワードとなる『千一夜物語』も登場します。不思議な世界観の中で白石さんへと視点が変わり、『熱帯』とは何なのかという問いが気になって読み進めました。
前半は謎が解けるというよりは私達読者が少しずつこの熱帯の不思議な世界観へ入り込む装置のような感覚でした。
真相に近づいているのかよく分からない。無風帯とか魔王とか言われても本の内容はまるでイメージできないからです。
それでも東京や京都の街並みの描写や現実と非現実の曖昧な世界観が読んでいて心地よく読めていました。
驚いたのは後半で池内さんの書く物語の内容に入った章からです。
いよいよ本の中の世界へ入り込むようにファンタジー色が強くなっていきます。
この物語はどんな着地点なのだろう。
そんな期待と不安がありました。
そして最後の森見登美彦筆の『熱帯』。
物語の入れ子構造というか本当に斬新!
読み終わってまず感じたのは私自身が『熱帯』の謎に囚われているという感覚でした。
謎が謎を呼びループしていくこの読後感は新しくて、混乱することに楽しめる一冊です。
終わりに
また新しい色の作品でした。
この分量でこんなに実験的な作品を書ける森見登美彦さんに「すごい!」の一言です。
そしてそれが評価されて本屋大賞にノミネートまでされるとは。
私個人的にですが読書の入り口として勧めるのは怖い本です。それくらい好き嫌い分かれて嫌いな人にとっては読み終えられることが心配になってしまうかも笑
でもこうやって色んな作風があって小説も時代に変わって変遷していくのかも。同じような作品ばかりじゃつまらないですし。