『そして、バトンは渡された』と同時期に書かれたという最新作!
本屋大賞受賞発表前の2月に発売された本作ですが、『そして、バトンは渡された』の受賞によってなおさら注目を浴びています。
『そして、バトンは渡された』は血の繋がりのない父と娘を中心に描かれる、揺るぎない家族の物語でした。
対して『傑作はまだ』は血が繋がっているだけの親子の物語で、息子の智も父の加賀野を「おっさん」と呼ぶなど家族の実感が薄いのです。
方向性が違うように思えますが、両作品共に最後に光が差すような素敵な物語です。
今こそ大注目の作品です!
あらすじ
そこそこ売れている引きこもりの小説家加賀野の元に生まれてから一度も会ったことのない息子の智が突然訪ねてきます。
写真でしか会ったことがないのにも関わらず智はしばらく住ませて欲しいと言います。
押し切られる形で始まった血の繋がりしかない不器用な父と子の同居生活の物語です。
ここからネタバレ注意
傑作はまだの感想(ネタバレ)
作家の物語ということ
実際に活躍している小説家が書く作家の物語というのは興味深くて面白い!
よく素人が文学賞に応募するタブーとして小説家が主役の物語ということを言われているということを聞いたことがあります。
出版社に応募する原稿として釈迦に説法というか、リアリティのハードルは高いですし、新鮮さも感じないという話だったように覚えています。
でも瀬尾まいこさんの描く作家の世界というのはそれだけで読んでみたいという魅力!
加賀野の性格
この主人公の加賀野がまさに浮世離れしていて内にこもっていくような生活が痛々しくて、でも息子を始めとした世間の繋がりから少しずつ変化していく様子を読んで温かい気持ちになりました。
善意で支えられる人間関係や世界は素敵です。
加賀野は変わった性格を持ちながらも息子を入り口に一つ一つ考え始める様は純粋で素直に感じます。
年齢を重ねると自分の考えが大きくなってどちらかというと頑固になっていくようなイメージがあったけど、加賀野のそういう部分は私も持っていきたいと感じました。
終わり方について
終わり方も微笑ましくて私の中で春っぽい作家ナンバーワンです。
それを期待しちゃいけないとは思いますが今回の物語も読後感いい気分でした。
タイトルの意味を読み終わってしみじみ感じます。
『傑作はまだ』
あぁ、なるほど、ぴったりすごくいいタイトル。
傑作はまだを読み終わって感じた〇〇
「血の繋がっているだけの親子」という言葉は強いですね。
私も読み終わった時、自分の父親はどうしているだろうと思いました。うちの父母は熟年離婚して、家族はみんな一人暮らしをしています。
普段定期的にやりとりをするわけでもないので会おうと思ったらそれなりに動いてアポとらないといけません。
仲悪いわけじゃないからいいんだけど、今年も自分から動いて一回、できたら二回一緒に飲めるように動こうと思いました。