小説

ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』感想【本屋大賞翻訳小説部門第1位!】

2021年本屋大賞翻訳小説部門第1位作品!

全世界で1000万部以上売り上げ2019年・2020年アメリカで一番売れた小説というふれこみで昨年日本でも話題になりました。

私自身手に取って読んでみると、舞台となっている湿地の濃厚な雰囲気の中で描かれるカイアの姿が印象的で取り憑かれるように読み込みました。

そして今回の本屋大賞受賞です。ますます話題になりますが、本当にもっともっと日本でも話題になって欲しいと思える小説だったので嬉しいです!

あらすじ

物語はノース・カロライナ州の湿地でチェイス・アンドルーズの死体が発見されるところから始まります。

捜査が行われる1969年と村人から「湿地の少女」と呼ばれるカイアの成長を追う1952年以降の時代と交互に描かれていきます。

濃密な自然の中でカイアの渇き、苦しみ、喜びが心を震わせる小説です。

『ザリガニの鳴くところ』の感想

著者のディーリア・オーエンズ氏の69歳で執筆した初めての小説です。

ディーリア・オーエンズ氏はノンフィクション『カラハリ――アフリカ最後の野生に暮らす』(マーク・オーエンズとの共著、1984)(早川書房刊)が世界的ベストセラーとなり、ネイチャーライティングに送られるジョン・ハロウズ賞を受賞しています。

動物学に関しての研究も進められてきた方で、現在はグリズリーやオオカミの保護、湿地の保全活動を行っているということです。

そんな著者だからこそ描ける唯一無二の雰囲気が作品には流れています。

広大な湿地は人間でなければ天国、ただ人間にとっては不便にも思える場所です。

そんな湿地でたったひとりで生きる少女・カイアの姿はとても強く見えるし弱くも見えます。

読みながら本の世界に気持ちを乗っけると強さと弱さが気持ちの中で揺れて泣きたくなってしまう想いになりました。

そしてかけられる殺人の容疑。

真実は何なのか。緊張感と私自身の物語がこうなって欲しいという願望がページをめくる手を止められず作品に飲み込まれていきます。

一言で表せるような感情がなくて、ここまで自分の気持ちを揺らす小説はなかなかありません。

描かれる湿地を中心とした世界も濃密なたくさんの命を感じることができます。

物語は事件の核心にも近づいていくのですが、考えれば考えるほど強い気持ちが折り重なっていて、

これは本当に丁寧に作られた小説の威力ですね。

一冊の本としては500ページほどの長めの小説です。

ただ美しさを感じる場面や目が離せない場面、緊張感のある場面が並んでいて読み始めるととても短く感じました。

感想を書くに形容詞を並べまくりたくなるくらい奥深さを感じた傑作です。

終わりに

私はこの作品を読んで、著者のこの作品をたくさんの人に読んで欲しいという気持ちが伝わってきたような気持ちがしました。

それはストーリーだけではなくて、湿地という自然があって、そこで生きる少女の姿や想いがあって他者の視線などあらゆる全ての要素を読者に感じ取ってほしいという強い気持ちです。

私は描きたいものがあってそれを伝える技術や努力があって素晴らしい小説が出来上がるのだと信じています。

だから一つの文字で綴られた場面で頭に浮かび上がる情景が心を震わせるのです。

本書は翻訳された作品ですが、ディーリア・オーエンズ氏が書き、訳者の友廣純氏の届けたいという気持ちも重なって、出来上がった本書を読んで私は文字通り震えました。

すごいと思いました。

今現在最大限に話題になっていますが少しでも多くの人に読まれて感想を共有することができたら嬉しいなぁと思います。

ABOUT ME
いちくらとけい
社会人の本好きです。現在、知的障害者の支援施設で働いています。 小説を読むことも書くことも大好きです。読書をもっと楽しむための雑記ブログを作りたいという気持ちで立ち上げました。

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