川端康成賞受賞のかくも愛しき作品集。
山田詠美さんの絶品も言える文章の魅力を味わえる短編集です。
言葉の選択というか、使い方というか、日本語の文章も使い方によってこんな雰囲気を醸し出せるのかと驚き、味わい、楽しみました。
さくっと読める「絶品」の短編集を紹介します。
簡単なあらすじ・説明
奈美はある夫婦と親しくしていますが妻の虹子よりも夫の孝一の方に深い友情を感じています。虹子にまつわる問題を二人で解決することで、更に親密度は増していきます。しかし、孝一の出張中の雨の日を境に、三人の関係に歪みが生じ始めて……。(「生鮮てるてる坊主」)
神戸美子は幼い頃からありとあらゆる悪意を一身に受けてきました。中学の時、ついに長年の恨みが念となって同級生の男子を襲います。世にも稀な復讐の才能を手に入れた美子は、教祖と信者を兼任するひとり宗教「みこちゃん教」を設立することに……⁉(「自分教」)
スプラッタ描写に定評がある作家・夏耳漱子は、自作に最も似つかわしくないはずの「珠玉」という惹句に憑りつかれてしまいました。やがて頭の中で珠玉たちが地位向上と種の保存を騒ぎ出して……⁉(「珠玉の短編」)
山田詠美ワールド全開の11編の絶品短編が綴られています。
珠玉の短編の感想
恋愛に友情に自尊心に、様々な欲望を抱えた個性的な人達の物語が詰まっている短編集です。
どの物語も言葉に対しての感性が鋭くて個性的であり、正直で、やや病的です。
川端康成文学賞を受賞した「生鮮てるてる坊主」をはじめ、表題作の「珠玉の短編」などどの作品も印象に残る魅力的な作品ばかりでした。
文章そのものが絶品と言えます。
普段使わないような言葉が文章の中で雰囲気を醸し出していて、「絶品」という言葉が文字通り合うような短編ばかりでした。
言葉の難しい頭でっかちな文章というわけではなくて、くすりと笑ってしまうような言い回しばかりで気楽に読めます。
でもストーリーとしては変わっていてやや官能的で少し下品で、病的な主人公が自由気ままに生きています。
帯に「名手が贈る」という文言がありますが、言葉が上手いってこういうことを言うんだなぁと思いました。文章がするする入ってきて、所々に散りばめられているユーモアに楽しさを感じてしまいました。
どの話も面白くて深さも感じる話ばかりでしたがたくさん笑ってしまったのは「骨まで愛して・・みた」です。
亡くなったかつての恋人の骨を身につけて現在の妻と新婚旅行へいく話です。
なにが笑えるのかというのは伝えづらいですがそのおろおろしながら骨について考える夫の心情が笑えて、ブラックユーモアっていうんですかね、面白かったです。
終わりに
日本語って奥深いな。
そういえば大学の近現代文学のゼミの先生が推していました。もう引退されたらしいのですが大学時代もっと山田詠美読んで話したかったな。
日本語の語彙と使い方を駆使することで本当に色んな表現ができることがよく分かりました。
分かりにくい言葉や難しい言葉という意味ではなくて、意味を知らなくても構成される漢字で感じる雰囲気に酔ってしまいました。