小嶋陽太郎さんの若者たちの情動ときらめきが詰まった短編集。
小嶋陽太郎さんは『気障でけっこうです』でデビューし、『今夜、きみは火星にもどる』、『おとめの流儀。』、『こちら文学少女になります』、『ぼくのとなりにきみ』、『悲しい話は終わりにしよう』、『放課後ひとり同盟』など多数の著書を発表されています。
『友情だねって感動してよ』も含めてタイトルがお洒落で、文章にも瑞々しさと生々しい傷の両方を感じられるような魅力があります。
『友情だねって感動してよ』はカバーが浅野いにおさんで『ソラニン』や『おやすみプンプン』を描いた漫画家さんでまさに文章とぴったりだと思いました。
私は「ソラニン」が大好きな漫画の1つで、映画も好きです。そしてこの小説の雰囲気も好きです。
Contents
簡単なあらすじ・説明
優等生で日和見主義の「僕」とガールフレンドの吉川、人形のはるちゃんと会話するクラスメイト・湯浅の一筋縄ではいかない友情関係を描いた描いた表題作をはじめ、三人の男女が紡ぎ出す”あの頃”の全てが綴られています。
20代の著者が執念で描く、いま、そこに確かに存在する若者たちの情動と煌めきが詰まった、生傷だらけの全6篇の短編集です。
友情だねって感動してよの感想
全ての作品の舞台は神楽坂近辺で公園や神社など少し不思議で特徴的な場所が集められた全ての短編を通して度々登場します。
物語は繋がっているわけではなくてそれぞれ独特の余韻を残して終わっています。
煌びやかな青春というよりも致命傷には至らないけど生傷ばかりの惹きつけられる青春物語です。
ちょっとブラックで、でもユーモアがあって、それでいて生々しい青春が詰まってる。ぞくぞくします。
登場人物もキャラ的に好きです。
あと話の内容とは若干それますが帯に惹かれたのですが、これはなんなのでしょう笑
私はアジカンも後藤正文も好きだし、たまにカラオケでも歌います。
書かれていた文句は「熱いと温かいの真ん中くらいの何かが駆け抜けた。」
熱いと温かいの真ん中ってぬるめってことなのか、それとも微妙に熱いのか、風呂的な観点なのか。
熱い物語だったり、温かい物語って面白そうだけどその中間って中途半端な感じがしてしまう。
そして帯裏面は、
どこかに置き忘れてきた青臭いすべてを抱きしめて、オールライトと叫ぶには年を取り過ぎたのかもしれない。
読後、作品中一度も「オールライト」という単語は出てこないのに何って思いました。
自分の書いた本の宣伝なのか、引っ張られてるのか(後藤正文さんは『何度でもオールライトと歌え』という単行本を出している)
でも一周回って興味が出てきている自分もいて、さらにきっと世の中にはアジカン好きで購入する層もいるに違いないと思って納得しました。
こういう帯も面白いのかも。
だから批判でも何でもなくて本屋で笑ってしまったってことです。さらに読み終わった後も改めて帯を見て笑いました。
とても帯の話が長くなってしまいましたが、独特で魅力溢れる文章を共有したいと思い、勧めます。
終わりに
1991年生まれの著者でこれだけの数の作品を発表されています。きっとこれから話題になる作品を作っていく小説家の一人なのだと思います。
私はタイトルが好きで、私にとって好きな言葉のセンスを感じます。
私よりも年下の作家さんなのですが描かれる心情には共感もあって楽しむことができました。
三十代にもおすすめです。