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読書の秋・じっくり読みたいおすすめ長編小説10選!

涼しくなってきまして秋めいた風を感じることも多くなってきました。

過ごしやすい季節で公園のベンチでも、カフェの野外テーブルでも、家の中でも、落ち着いた気持ちでじっくり読書をしてみませんか。

「秋」に私が思うじっくり楽しめるおすすめの長編小説を10作紹介します。

参考にして頂けたら幸いです。

読書の秋・じっくり読みたいおすすめ長編小説10選

1.窪美澄『やめるときも、すこやかなるときも』

大切な人の死を忘れられない男がいます。

過去のトラウマから12月になると数日間声が出なくなります。

また、うまく恋ができない女がいます。

家庭環境が原因で現在でも困窮する実家を経済的に支えています。恋とは縁遠く、恋愛に対する辛い過去もあり自信もありません。

どこか欠けた心を抱えた2人が出会い、相手と自分自身に向き合っていく物語です。

人生の中で私が出会った大切な一冊というようなテーマがあって聞かれたら(聞かれることなどありませんが笑)こういう本を選ぶと思います。

こんな本ばかりの読書では疲れてしまうけど、自分の弱いところとか辛い過去とか、乗り越えたり、寄り添って生きていかなければならないことに対して向き合う話というのは真剣に読めば読むほど大切です。

家具職人の物語というのも新鮮でじっくり読む読書として大おすすめの作品です。

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2.吉田修一『横道世之介』

1980年代後半、長崎から1人上京した横道世之介の大学生活を描く青春小説です。

1980年代後半のバブル真っただ中、友達の結婚に出産、学園祭でのサンバ行進、お嬢様との恋愛、カメラとの出会いなど世之介の周りでは様々な出来事が起こります。

そんな世之介の生活とその時、世之介の周りにいた人々の20年後の場面がクロスオーバーして描かれています。

世之介の押しの弱さと芯の強さが合わさって可笑しいのですがまっすぐで最後に感動が広がるような物語です。

世之介の真っすぐな物語はすがすがしい秋の読書に最適です。

世之介のおかしくて、少し切ない物語をこれから読み始める人の気持ちの動きを想像すると羨ましくなるくらい、初読の時、私は本を抱きしめたくなるような気持ちになった作品です。

この本を読んで面白ければ『続・横道世之介』を読んで欲しいです。

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3.伊坂幸太郎『砂漠』

大学に進学した春、5人が知り合います。

5人は春、夏、秋、冬、それぞれの季節の日々の中で愉快で時には痛くて、少し奇跡的な時間を過ごします。

モラトリアムの贅沢な、それでいて滑稽さは5人の個性できらきら輝いています。

清々しい気持ちになれるエンターテイメントです。

これを読んで「学生時代に読みたかった」という感想を言う人が本当に多い。

でも総じて言えるのはどんな年代の人でも学生時代の愉快で奇跡的な物語に魅了されて終わってみればたくさんの面白かったという感想をくれます。

愉快なキャラクターと痛快な展開、驚くべき伏線……。

おすすめされる要素があり過ぎてこの秋に再読すら勧めてしまいたくなる作品です。

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4.平野啓一郎『マチネの終わりに』

クラシックギタリストの蒔野と通信社記者の洋子の出会いから始まります。

出会った瞬間から強く惹かれ合います。

それでもお互いの事情や環境、時代背景があり結びつくことはありません。

また蒔野はスランプに陥り、洋子は体の不調に苦しんでいます。

お互いの事情を慮りながらすれ違い、葛藤の中で自身を整理していきます。

深く強い消し去ることのできない初恋のような大人の恋愛の話です。

運命の出会いとはどんなものなのでしょうか。

この話には相手を思う気持ちゆえの選択があります。それは大人の判断とも言えます。でも決定的にすれ違います。

自己満足の結果なのかもしれないし、それが運命なのかもしれない。

初恋のような大人の恋愛。矛盾があるような言葉なのに物語を読んでみると一気に引き込まれてしまいました。

映画化も近づいているようなので話題としてもタイムリーですね!

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5.吉田修一『国宝』

任侠の一門に生まれながら、この世ならざる美貌を持った喜久雄。

極道の世界から梨園の世界へ飛び込んだ立花喜久雄の人生を中心に物語は進んでいきます。

上下巻で20の章立ては喜久雄の師匠や上方歌舞伎の名門の嫡男として生まれ育った俊介、幼いころから太い絆で結ばれている徳次など様々な人物の人生に触れて喜久雄と交わっていきます。

長崎から大阪、そして高度成長後の東京へ舞台を移しながら、血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り、数多の歓喜と絶望が、役者たちの芸道に陰影を与え、それぞれの人生を思わぬ方向へと向かわせます。

そして喜久雄の人生を想像もできないような域にまで連れ出していく、最高の感動を届ける大河小説です。

別の世界に連れていってくれる小説です。

歌舞伎という世界で生きる人たちの日々の陰影は美しくて、でも芸道ならではの絶望もあります。

今まで見もしなかった世界の、想像もできない世界へと連れ出されて最高の感動を与えてくれます。

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6.米澤穂信『王とサーカス』

フリージャーナリストの太刀洗万智は海外旅行特集の仕事を受けネパールに向かいます。

現地で知り合った少年にガイドを頼み穏やかな時間を過ごそうとしていると王宮で国王殺害事件が勃発します。

太刀洗は早速取材を開始しますが目の前で1つの死体が転がっているのを発見します。

実際に起きた王宮事件を背景に描かれたフィクションで、登場人物の想いや考えが交錯するミステリーです。

太刀洗万智が登場するミステリーの中でも重厚な面白さに溢れている作品です。

『このミステリーがすごい!2016年度版』、<週刊文春>2015年ミステリーベスト10、「ミステリーが読みたい!2016年版」とミステリー3冠を達成した物語!

太刀洗万智を見ていると自分といかに真摯に向き合い続けることがどれだけ大切なことか感じさせられます。

なんとなく日々を過ごすのではなく日々の経験が自分自身の前進へと繋がっていくように目の前のことに集中しようと思いました。

この本を読んで面白く感じられたら別の太刀洗万智が登場するミステリー『真実の10メートル手前』や『さよなら妖精』を読んで欲しいです。

7.辻村深月『かがみの孤城』

そこは城の中で、同じように光る鏡をくぐりぬけてきた、しかも似たような境遇の中学生が7人集まるという始まりです。

なぜこの七人がこの場所に集められたのでしょうか。

全ての謎が明らかになった時、驚きと大きな感動に包まれます。

本屋大賞受賞作品です。

この作品は主要人物が7人もいて、7人がそれぞれ平坦な現実を生きているわけではないのに一つの物語の中でしっかり生きているから圧倒的にすごい。

面白い。再読だってしたくなってしまう。

今まで読んだことのない世界観に引き込まれて読後感もよくてただただ読んでよかった感が残っていました。

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8.原田マハ『たゆたえども沈まず』

1886年、栄華を極めたパリの美術界に、流暢なフランス語で浮世絵を売りさばく一人の日本人がいました。

彼の名は、林忠正。

その頃、売れない画家のフィンセント・ファン・ゴッホは、放浪の末、パリにいる画商の弟・テオの家に転がり込んでいました。

兄の才能を信じ献身的に支え続けるテオ。そんな二人の前に忠正が現れ、大きく運命が動き出していきます。

史実を元にして原田マハさんが自由に創作したフィクションです。

綴られる物語の要所要所に史実に残るエピソードが描かれています。

読書の秋、芸術の秋……。秋には色々な異名がありますがゴッホの壮絶な人生を描いた本作はまさにぴったりの作品だと思います。

兄で画家のフィンセント・ファン・ゴッホは37歳で亡くなり、画商のテオドルス・ファン・ゴッホは33歳で亡くなりました。

人生を突き詰めて(突き詰め過ぎてとも言えるかもしれない)生きた日々の物語は実際にいた人間という事実と合わさって強い力で心を揺さぶります。

今月はゴッホ展も開かれますし、そういう意味でもタイムリーな本なのですが、時期に関わらずおすすめの本です。

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9.ケント・ハルフ『夜のふたりの魂』

アディーは近所の1人暮らす男性・ルイスに夜、ベッドで横になってお話をして一緒に眠る提案を持ちかけます。

アディーは夫を亡くしてずいぶんたっていてルイスもまた妻を亡くしてずいぶんたっています。

夜の闇の静けさの中で穏やかですが深くて強い、ふたりの新しい愛の物語です。

この小説の筆者であるケント・ハルフは妻のキャシーに「僕らの物語を書こうと思うんだ」とこの小説を書いたそうです。

ハルフが好きだったのはキャシーと夜、ベッドに横たわり手を握りあって話をしながら寄り添って過ごす時間だったから。

そしてこの物語を書き上げて、出版については見届けることなくハルフは亡くなりました。

遺作となったこの作品は海外の小説ですが私たちに伝わる言葉が切々と綴られています。

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10.恩田陸『蜜蜂と遠雷』

近年、その覇者が音楽会の寵児となる芳ケ江国際ピアノコンクール。

自宅に楽器を持たない少年・風間塵16歳、かつて天才少女としてデビューしながら突然の母の死以降、弾けなくなってしまった栄伝亜夜20歳、楽器店勤務のサラリーマン・高島明石28歳、完璧な技術と音楽性の優勝候補マサル19歳。

天才たちによる競争が始まります。それは自らとの闘いでもあります。

天才たちが交わり何が起きるのか。

今、映画公開で大きな話題ですがじっくり読んで楽しめる秋の読書を考えた時に外すことはできませんでした。

あまり天才という言葉を使うのは好きではありませんが、奇跡的な存在とでも言えるくらいの紛れもない才能と、それを磨き上げてきた天才的なピアニストの人生が重なる瞬間が描かれた物語です。

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終わりに

「秋」というテーマで選んでみれば、家具職人、クラシック、絵画、歌舞伎など芸術よりの作品がおおくなりました。

もし読んでいない作品があって読んでもらえたならば感想記事のリンクもそれぞれつけているので読後の感想を共有できたら嬉しいです。

ABOUT ME
一蔵とけい
一蔵とけい
社会人の本好きです。現在、知的障害者の支援施設で働いています。 小説を読むことも書くことも大好きです。読書をもっと楽しむための雑記ブログを作りたいという気持ちで立ち上げました。

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