鬼才・野﨑まどさんの作家デビュー作にして、メディアワークス文庫賞を初受賞した伝説の作品です!
野﨑まどさんと言えば現在公開中の劇場アニメ『HELLO WORLD』を手掛けるなど大注目の作家です。
私は先月参加させてもらった読書会で参加者に「野﨑まどは天才なんです!」と紹介され、手に取ってみれば面白い!!!
なんで今まで読んでこなかったのだと思いながらもこれからの楽しみが著作の分、一気にたくさん増えました。
そんな著作の中でも今回は最強のデビュー作とも言える作品を紹介します。
Contents
簡単なあらすじ・説明
芸大の映画サークルに所属する二見遭一は、天才とうわさ名高い新入生・最原最早が監督としてメガホンを取る自主製作映画に参加します。
最原最早の世界に近づくにつれて二見が思うこととは?
面白おかしく、熱さもある学生の物語の中には、異質なものが流れています。
そんな映画監督の話です。
ここからネタバレ注意!
【映】アムリタの感想(ネタバレ)
学生が集まって自主製作映画を作り込んでいく。
一見、物語は爽やかな熱さの流れる学生物語として読んでいけます。
優れた絵コンテがあり、それに魅了された仲間たちの姿もわいわい楽しそうです。
最原も天才肌を時折見せるも二見と漫才のようなやりとりばかりが面白くて馬鹿馬鹿しくも面白い会話ばかりです。
うっすら仲間たちの間で恋心も表れているようなどきどきもあります。
不思議さの残る最原の気持ちを追いながら、誰しもに評価される作品を作り上げていくという展開は読みやすさもあって一気に読み進めていきました。
雰囲気が変わったのはいつ頃からでしょうか。
兼森さんが定本の死と最原の関係について考えてしまい、二見に吐露したときから?
最原が失踪して連絡とれなくなり、二見が最原の部屋から「アムリタ」の絵コンテを見てから?
篠目さんに最原の以前制作した映画を見せてもらった時から?
それにしても二見が最原の作品に触れた時の描写が迫真で実際に見たわけでもないのに最原の天才的な作品が伝わってくるようでした。
詳しくは書きませんが村上春樹の『世界の終わりとハード・ボイルドワンダーランド』のシャフリングの謎について読んだ時のような気持ちを思い出しました。
天才・最原の映画監督としての強い判断が物語の始まりから流れていてそれが分かった時に驚き、そしてもはや完全に飲まれている二見の健気さにこみ上げるものがありました。
最原は最後まで映画監督でそれが全てというところの揺るぎなさが強い。
そして二見性なのか定本性なのか分かりませんが最後の
この映画はきっと、とても面白いのだ。
という映画に魅せられた人間の終わり方が色んな想いを超越していて、ただならぬ物語の雰囲気を感じて読み終えることができました。
終わりに
天才を描いた物語はたくさんあると思いますが会話の軽さと実際に流れている出来事の重さのギャップに初体験の面白さを感じた作品です。
分量は薄く、さくっと読めるのに読後感はけして軽くはありませんでした。
こういう読書を学校の教科書に入ってたら面白いのだろうなぁ。