天才とはどんな人物を思い浮かべますか?
様々なジャンルに「天才」と呼ばれる人はいます。
ここまで達成すれば「天才」という明確な基準があるわけでもありません。
間違いなく言えるのは圧倒的な活躍が伴った人間だということです。
この小説は元内閣総理大臣田中角栄の物語です。政治の酸いも甘いも知っている石原慎太郎さんが書くからこそ迫真で説得力に満ちています。
基準のない曖昧な「天才」だからこそ、この小説で圧倒的と言われた才能に触れてみたくこの本を手に取りました。
あらすじ
元内閣総理大臣である田中角栄の話です。
一人称で死ぬ瞬間までを自分語りのようにして綴られています。
天才の感想
実際に日本の歴史で存在感を放っている田中角栄の生い立ちから死まで、一人称で描かれていることに惹きつけられます。
しかもそれが同じ政界で田中角栄の金権政治を批判したこともある石原慎太郎の手で描かれています。
石原慎太郎はこの本出版後にいくつかのインタビューに応じててその中で田中角栄の予見性や人たらしと言われるほどの人間力を語っています。
田中角栄とのエピソードも交えて。
だからこの小説は単なる褒め称えるのみの偉人伝ではなくて、鋭い手腕や痺れる外交と、ロッキード事件以降野心を持ちつつも浮かび上がれない不遇な部分も含めて一人称の人間味溢れる文章で書かれているのは、ちょっと他の人間では書けない奇跡的な小説だと思います。
分量は少なくて、きっと田中角栄の功績についてこれでは薄すぎるという感想を持つ人もいると思います。
だけど小説として読んだ場合、しかも田中角栄が私達に語りかけるような文章であるならばこれが自然だと私は思います。
お気に入りの場面は田中角栄と毛沢東が接見する場面があります。すごい贅沢で大興奮でした。
私は天才と呼ばれる人を感じたことがありません。
でも強烈にこの小説のタイトルに惹かれました。
天才ってパワーワードですね。
それは憧れなのか分かりませんけど読み終わって感じたのは死ぬまで自分は自分なんだっていうことです。
その「自分」が田中角栄はとても強い。それは小説での人物だからなのかもしれませんが。ただ私も私として、なんとなく過ごさないように日々もっと強く頑張ろうと思いました。
終わりに
このブログを始めてから「自分はこの小説の何を面白いと感じているのか」を考える機会が多くなりました。
言葉の使い方、文章の作り方、あらすじ、登場人物の個性……。色々と浮かんで思い浮かんだものを記事にしています。
この小説は本物の天才ってどんな人物なのだろうと興味を持って読みました。
その分野で強烈な存在感を示せる人間というのが天才なのかもしれません。
憧れがあって嫉妬があります。田中角栄は実在した人物です。
だからこその重みもはらんだ一冊でした。