東野圭吾さんのベストセラー長編小説です。
先日、投稿した『希望の糸』とはまるで違う雰囲気です。
痛くて心に刺さる物語は一気に本の世界に飲み込まれること必至です。
あらすじ
娘を奪われた父親長嶺がいます。
拉致され暴行を受けた末に亡くなります。
長嶺は犯人についての密告を受け、犯人のアパートに行くと娘が陵辱されているビデオに気づきます。
復讐する長峰と長嶺や仇である少年を追う警察や関わる人々がそれぞれに想いを巡らせ交錯していく話です。
さまよう刃の感想
復讐を決意させる事件は最低の事件です。
想像すればするほど読み手も嫌な気持ちになります。
でも犯人は未成年の為、法的な罪は軽い。そして子を持つ親であれば警察も復讐を進める長峰の気持ちをわかってしまう場面もあります。
この小説を読んでいると正義とか正しいこととか、一体何が正解なのか分からなくなります。
苦しくて辛くて救いがなくて、犯人が少年であったとしても殺されてしまえばいいと乱暴な想いになってしまう時もありました。
でも自分の立ち位置によって考えが変わってしまうような気もしてしまいます。ずるい言い方ですが私には安易に意見を言うことができない。でも1つの考え続けなくてはならないこととして残っています。
1つの話としてたくさんの強い感情を揺さぶるこの本は凄まじかったです。本好きの友達に勧められて読みましたが記憶に残る本になりました。
映画化もされて有名な本なので読んだ方も多いとは思いますが、読まれてない方、複雑に入り組んだそれぞれの感情があって、深く強いこの本の力を感じて欲しいという気持ちもあります。
読後さわやかな気持ちにはなれませんが、気持ちに刺さる余韻を与えてくれます。
終わりに
働いている施設でテレビがついていると毎日のように辛いニュースが流れています。
毎日毎日驚いて悲しんで、でも時間が経てばいつの間にか風化して頭から消えて、また新しい悲しいニュースが入ってきます。
悲しいニュースをなくそうとか大それたことを言うつもりはありませんが、辛いニュースに慣れて感覚が麻痺しないようにいたいと思います。
この本を読んですごく辛くやりきれない気持ちになりました。
衝撃的な本を読んだ後に感じる気持ちに自分がどんな人間なのか分かるようなものがあって、私はこの小説を読んでよかったと思いました。