小説

夏目漱石『夢十夜』感想【読書について考えてみる】

小説のイメージが近代文学の文章という方は多いと思います。

私は夏目漱石『こころ』とか芥川龍之介『羅生門』とか教科書で読んで小説のイメージになっていました。

いいところもあるし、悪いところもある。

悪いのは近代文学の文章は表現とか言葉とか多少固いから「小説を読む=勉強」のようなイメージになるとどうしても趣味としてお金を出して小説を読むハードルというのが高まってしまうような気がします。

実際に「読書が趣味です」と人に話すと「すごいね」という反応が返ってくることもあります。

全くすごくなくて動画を見たり、テレビを観たりすることと同じ感覚なのでそういう反応がぴんと来ません。

だからといって夏目漱石や芥川龍之介など近代文学を悪くいうつもりはなくて、かつての文豪が作った小説には雰囲気があります。

命を懸けて表現しようという迫力を感じることも多いです。

だから今回は夏目漱石でさらっと読めて雰囲気を感じることができる『夢十夜』を紹介します。

夢十夜のあらすじ・説明

「こんな夢を見た」という書き出しから始まる10編の短編集。

1908年に発表された夏目漱石の連載小説です。

実際に観た夢のような突拍子のない話ですがその名の通り、夢のような幻想的で少し不気味な話となっています。

漫画でも出ています。

 

夢十夜の感想

昔、大学受験の課題図書で出てきて読みました。

試験のために読んだので面白いというよりはその時は意味分からないというのが第一印象でした。でも気持ちには残っていて、特に盲目の子どもを背負って歩く「第三夜」が印象的でした。

時間が経って、今回漫画版が出ているのに気づいて読んでみたら、漫画だからか読みやすくてすらすらと読めました。

でもちょっと物足りない気持ちもあって、無料の小説版も電子書籍でダウンロードして読むと面白くて。漫画を読んだ後だからなのか、すっと小説に入れました。

とても美しいリズムの日本語と繊細な感性で文章を綴る作家だと思います。

この『夢十夜』は漱石作品の中で分量が少なくて読みやすい。そしてひたひた迫ってくるような存在感のある雰囲気があります。

夏目漱石は38歳で作家デビューをしています。それから49歳で亡くなるまで10年ほどしか作家人生はありません。

発表された作品は『吾輩は猫である』『こころ』『坊っちゃん』など、名の知れた作品も多いのに意外に思えませんか?

神経過敏で非常にストレスに弱く、死因も消化性潰瘍だったそうです。

今から100年以上昔の文学。今の文学と面白さを比べるとかではなくて、私みたいな素人でもわかるのは当時小説を書くことに人生を賭けた1文字1文字が今残っている作品なのだと思います。

作品に向き合うことさえできれば今も昔も評価されたものには魅力があるものだと思います。

昔の文章なのでなかなか勧めづらい読書ですけど、昔の作品と向き合うスイッチとして漫画を読んで、それから小説を読んでみて、とても入りやすく楽しめたので紹介しました。

夢十夜を読んで読書について考えること

小説は奥が深いと思います。

こういう雰囲気を醸し出すような文章もあれば、ぱっと頭の中で展開するような文章もあります。

私は少しでも小説の楽しみが広がればいいのにといつも思っています。

漫画も映画も動画もテレビも好きです。

だけど今過ごしている時間の中で「疲れている時は漫画」「ごはん食べながら動画」とかTPOに合わせて選択する媒体の中に小説を選択するとぐっと楽しみが深まる場面もあると思うのです。

私は二時間くらいの時間があってコーヒーと一緒に小説を読むと本当落ち着くし、それで小説の世界に入り込むと読み終わったあと、頭の中で展開された物語がずしりと胸に降りてくるような感覚がたまらなく好きです。

小説が一番私自身の生活に影響を与える媒体だと思っています。それくらい活字が頭の中で展開される小説の力ってすごいから。

そんな気持ちで考えていたら近代文学で雰囲気を楽しめて、読みやすい『夢十夜』について書きたくなったというわけでした。

ABOUT ME
いちくらとけい
社会人の本好きです。現在、知的障害者の支援施設で働いています。 小説を読むことも書くことも大好きです。読書をもっと楽しむための雑記ブログを作りたいという気持ちで立ち上げました。

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