住野よるさんのデビュー作です!
先月、住野よるさんの新作『麦本散歩の好きなもの』を紹介しました。
今では幅広い世代で愛されている住野よるさんの作品ですが、このデビュー作は紆余曲折あって出版に至りました。
ヒット後のインタビューでははじめ『君の膵臓を食べたい』はいくつもの文学賞で一次審査で落ちてしまったということを話しています。
それでも「どうしても誰かに読んで欲しい」という気持ちから「小説家になろう」というサイトにアップし、双葉社から本にしたいと連絡があり出版され、大ヒットとなりました!
だからといって文学賞に一次審査で落ちてしまったというのを審査する側の「見る目がなかった」とは思いません。文学賞受賞作はその賞によってカラーがあるわけですから。
だから単にその文学賞とテイストが合わなかっただけの話。
ただ当時の小説の面白さの枠組みを広げるような力を持つ小説がこの『君の膵臓を食べたい』だと思います。
そんな力を持っている作品を紹介させてください。
あらすじ
彼女は言いました。「君の膵臓を食べたい」
春、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾います。
それはクラスメイト女子の秘密の日記帳でした。
日記帳にはその女の子が膵臓の病気で余命が短いことが書かれています。
僕と彼女が出会い、それから最期の日が訪れるまでの日々が描かれた話です。
君の膵臓を食べたいの感想
正直に言います。
私はずっとタイトルから読まず嫌いしてきた本でした。
何度も本屋で見かけながら迷った時もありますがスルーしてきました。
これだけ話題になってきた本なのでどこかで話の内容を知ってしまう前に自分で読んでみようと思って手にしました。
読み始めると登場人物のテンションが全体的に高めで少し違和感があったのですが、頭の中でカバーのアニメのキャラクターによって再生されるとすぐに馴染みました。
物語の始めから大事な人の死の雰囲気が流れていてずるいと思いました(笑)変に感情移入したら苦しくなるのが見えていて警戒しながら読み進めました。
だんだん文章の雰囲気になれてくると底抜けに明るい女の子の姿が魅力的に思えてきて、男の子は気取った感じではあるけどそのかっこ悪さが高校生らしくて好きになってきました。そして警戒虚しく段々としんどくなりました。
大事な人の死というのはありきたりなテーマで、まして余命がある大事な人の残りの日々というのは言葉にすると食傷気味に感じられるのだけど、
散々涙を流し面白く読みました。
タイトルや内容が時代に合わせて練られたこのような作品は恐れず読めばやっぱり切なくて面白さも感じるのでしょう。
はい、面白かったです。
読まず嫌いせず、話題になっている時期に読んで一緒に盛り上がりたかったと反省までさせられる一冊でした。
君の膵臓を食べたいを読後、感じたこと
内容は違うけど学生時代に『世界の中心で愛を叫ぶ』を読んだ時も今よりも耐性無く1ページ目から泣いていたことを思い出しました。
軽く読める重い内容です。読みやすくてセカチュー好きにはそれこそ自信を持って勧めると思います。
作品の内容とは離れてしまいますが、明るく過ごす姿って魅力的だと感じたので私自身がもっと明るさを大事に過ごしていこうと思いました。
ここからかなり個人的な話を綴ります。
最近、私の身近で接してきた人が事故で亡くなりました。
亡くなる昼間に会っていつも通りに笑顔で話していました。
今でも実感が湧かなくて思い出そうとするとたくさんの気持ちの蓋というかフィルターというかかかって辛くならないようにしようとしている自分がいます。
死というものは誰にとっても本当に突然訪れるということを感じています。
怖いんです。
何が私は怖いのだろうと思います。
自分の死が? 大切な人の死が?
それとも記憶に生々しく残っている笑顔と接することがもうないという事実が?
今は分かりません。
でもこういう迷いとか変にうろたえてしまっている自分でいいのだと思っています。
『君の膵臓を食べたい』を読んで気持ちの動かしていない筋肉を使ったような気がしました。
この作品に限ったことではありませんが年齢と共にどんどん凝り固まっていく頭の中で読書で気持ちを思い出したり、もしくは新しい気持ちに気づいたりすることはとても大事です。
私にとっては。
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