小説

瀬尾まいこ『君が夏を走らせる』感想【出会いと別れが詰まったひと夏の大田くん物語】

16歳金髪ピアスの男の子が1歳の子どもと過ごすひと夏を描いた物語。

『あと少し、もう少し』の大田くんのその先、16歳のひと夏の物語です。

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『あと少し、もう少し』のスピンオフとして楽しめる作品ですが、駅伝が物語の本筋に絡んでいるわけでもなく、まるで色の違う作品なので、この作品単体としても間違いなく楽しめます。

私自身、この作品を初めて読んだ時には『あと少し、もう少し』の大田くんだと気づかずに読んで楽しめました。

本屋大賞作家・瀬尾まいこさんの描く登場人物が四苦八苦しながらも気持ちが繋がり成長していく心地よい読後感、間違いなし!

あらすじ

金髪にピアスでふらふらしている高校生の俺がふとしたきっかけで1歳10ヶ月の先輩の子どもの面倒を見ることになります。

ひと夏、1ヶ月間ですが、小さな手、でたらめな歌、喜ぶ顔、増えていく言葉、まっしぐらに走ってくる姿など、思いがけないことの連続に「俺」は右往左往しながら夏の日々を過ごしていきます。

そんな16歳の青春小説の傑作です。

君が夏を走らせるの感想

高校生の男の子にとってはカルチャーショックの連続で苦労しながら少しずつ心を通わせていきます。

鈴香ちゃんが少しずつ大田くんを受け入れていく過程や、大田くんと鈴香ちゃんが成長していく様子、ママ友との触れ合いは本当のように感じる出来事の連続です。

人を知る内に壁が取れていく関係は高校生と小さな子の関係に関わらず、人付き合いであればよくあることですが、より純粋に素直な反応として二人には現れるのでついつい深く共感してしまいます。

そしてひと夏という長いけれどもあっという間の日々には出会いと別れによる感情の動きが詰まっていて最後には大田くんに感情移入して胸が一杯になりました。

また初めて読んだ時には『あと少し、もう少し』という瀬尾まいこ作品のスピンオフということを知らずに購入し、気づかずに読み終えました。

後から知って、なるほどね、と思いましたがテーマ自体違うもののように思えるので『あと少し、もう少し』を読まずに読んでも全く問題なく楽しめると思います。

どちらから読んでも楽しめる作品だと思いますがこの『君が夏を走らせる』を読んだならば『あと少し、もう少し』を読んで欲しいですし、『あと少し、もう少し』を読んだならば『君が夏を走らせる』を読んで欲しいと思います。

きっと二つ合わせて楽しさを掛け算みたいに倍増させてくれるはずです。

君が夏を走らせるの感想まとめ

私は必ずしも明るくて優しい小説というのが特別好きというわけではありません。

でも『君が夏を走らせる』は特別楽しく読むことができました。

それは高校生が小さい子を見るという設定に共感を覚えたからです。

私には13歳差の弟がいて親が共働きだったので結構な時間一緒に過ごしました。

たくさんおろおろしたし、大学入試失敗して浪人した時は保育園の送り迎えを家族の中心でしていて、卒園式に父母さんに混じってビデオカメラを回しながら泣きそうになってました。

大学卒業して社会人一年目の配属が実家が東京なのに仙台で、一番悲しかったことは弟の成長を見れなくなることでした。

荷入れの日、東京から仙台に来てくれた父と小さな弟との最後別れで、悲しくて、バイバイした後、仙台駅中で父と弟の前からだだだだだっと走り去るという黒歴史を持っています笑 周りみんな驚いて見てました。

そんなどうでもいい思い出話は置いておいて、赤ちゃんとか子どもが好きな人にはほんわか面白く読めると思います。

共感大の素敵物語でした。

ABOUT ME
いちくらとけい
社会人の本好きです。現在、知的障害者の支援施設で働いています。 小説を読むことも書くことも大好きです。読書をもっと楽しむための雑記ブログを作りたいという気持ちで立ち上げました。

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