小さな頃、弟が小学校の宿題で作る「せんせい、あのね」という作文が好きでした。
「せんせい、あのね」という言葉から始まる自由作文です。
書き出しに「せんせい、あのね」という工夫があるとするすると言葉が紡がれていって、その一つ一つに当時同じようにまだ小学生だった私でさえもその豊かな感受性に心が洗われるような気持ちになりました。
ひらがなばかりの柔らかな文章で思いも寄らない切り口が本質のように感じられる言葉たち。
時々、そんな本を探したくなります。
『たいようのおなら』は子どもの詩集です。灰谷健次郎さんが編集というのも驚きで手に取りました。灰谷健次郎さんの『兎の目』、高校時代に夢中になって読みました。
1995年初版という20年ほど前の詩集ですが子どもが綴る言葉はまるで風化しません。
不思議ですね。
Contents
簡単な本の説明
子どもたちの飾らないことばとやさしいまなざしがいっぱいの、豊かな感受性に溢れた詩集です。
75の詩と灰谷健次郎さんのあとがきが収録されています。
子どもの詩集・たいようのおならの感想
一つ一つの詩が率直で物事と心が直接繋がっているような詩ばかりです。
こうやって詩を読んでいると今の自分には物事と心の間にたくさんのフィルターがかかっているのだと少しだけ悲しくなります。
フィルターは成長の証ともいえますけどね。
一つ一つの詩を紹介したいのですがネタバレが過ぎると思うので一つだけ。
「かげ」 はすだ ひとし(七歳)
ゆうがた おかあさんといちばへいった
かげがふたつできた
ぼくは おかあさんのかげだけ
ふまないであるいた
だって おかあさんがだいじだから
かげまでふまないんだ
大好きな詩です。
なんか少し泣きたくなってしまうような気持ちになるのは歳とったからでしょうか。
でもこんな詩がたくさん含まれていてそれぞれ全く違う角度から物事が見えている詩ばかりで少しずつ読み進めていきました。
一つ一つの詩には編者の言葉がくっついています。
子どもの言葉が大切に扱われているような感じがして嬉しく、なお好きな本になりました。
終わりに
私が持っているのが第20刷なので長くずっと読み継がれている本なのだと思います。
それくらい今もこれからも変わらないやさしいまなざしが綴じられています。
時には自分を包むあらゆるフィルターを取っ払って身の回りの物事で存分に自分の気持ちを動かしたくなります。
そうは思っていても忘れてしまった感覚はたくさんあって、この本を読みながら懐かしさ混じりの「あぁ、いい」という気持ちになりました。