印象派と言われた絵画を生み出した7つの画家の物語を原田マハさんが紡ぎます。
印象派絵画とは十九世紀後半のフランスでおこった一つの作風の呼び名で、それまでの古い因習や作画のルールにとらわれず自分の見たまま、感じたまま、好きなように描いた絵画のことです。
つまり印象派画家とは自分の印象のかたちを伝えることが使命と感じた画家たちのことです。
当時は今のように評価を得ることはなかなかなく、彼らの戦いは叩かれ打ちのめされどん底に落ちるような出来事の連続でした。しかし、それでも戦うのを止めませんでした。
まさに愛すべき愚かものたちです。
この本は印象派画家、モネ、モリゾ、マネ、ドガ、ルノワール、カイユボット、セザンヌ、ゴッホの7つの物語が紡がれています。
しかもたくさんの印象派の絵画がカラー写真として載せられていて、物語を読んで楽しむだけでなく、絵画を観て当時を想像しながら戦いのドラマを感じることのできる一冊です。
原田マハの印象派物語の感想
原田マハさんは多数の著名なアート小説を発表されている画家さんです。
私も大好きでこのブログでも何度も作品を紹介しました。
そしてこの本のストーリーは全てショートストーリーなのですが画家の生涯に沿ったストーリーでどんな背景があって写真で載せられている絵画があるのかを味わうことができます。
その時に感じた画家の印象の背景を知ることで絵の見え方も変わってきて、自分の中に画家の印象(あくまで想像ですが)が溶け落ちてくるのを感じました。
例えばゴッホの自画像は画家として活動した10年間の間に43点以上描かれたそうですが、色使いはそれぞれまた違っています。どんな心情でこのような雰囲気を醸し出す絵画を生み出したのか、想像すると一冊の物語を感じているような気持ちになるのです。
私には絵画の細かいテクニックや色使いに関する知識はまるでありませんがそれでもばっと本物以上に画家の気持ちが載せられた絵を見ると心が動くのが分かります。
また物語の他にも原田マハさんがセーヌを下り、モネ・アトラスを旅する「ノルマンディー紀行」や三菱一号館美術館館長の高橋明也さんと原田マハさんの公開対談も載せられています。
堅苦しさなく、何度も読み返したくなる一冊の本です。おすすめです。
終わりに
来月からゴッホ展も始まり、私自身の楽しみとして絵画が大きくなっているのを最近感じます。
行ってみればイヤホンガイドを使ってゆっくりと背景を知りながら楽しむことができて、少しずつ美術展に足を運ぶ回数も増えてきました。
物語や絵に触れて感じる気持ちは新しい気持ちで新しい気持ちを感じることで訪れる自分自身の変化が尊く感じています。
小さな頃は黙っていてもカテゴリーが変わる度に自然と変化がありそれぞれ新鮮な一年を過ごしていましたけど、社会人になってからは動かない限り新鮮味はなくなっていきますからね。
それが悪いという意味ではなく、幸せで変わらない日々が大切ではあるのですが、新鮮な感動のような気持ちを絵画などを通して最近感じることができてそれは私にとって嬉しい変化でした。
この一冊を読んでまた世界が広がりこれからの楽しみも増えたような気がしています。