創作ショートショートです。
1,2分で読めて楽しめるものというのをテーマに書いています。
具体的には1000文字以内の小説を週に1回くらいのペースで投稿できたらと考えています。
Contents
はじめに
今回の作品は前回から引き続き、十年以上前に開かれていた小〇館の1000文字小説のコンクールに初めて応募した作品を元ネタに大きく改稿したものです。
当時、その元ネタを投稿して運よく最終選考に残ってとても喜んだ記憶があります。
残念ながら前回の『私、星になる』とは違って佳作以上をとることができなかったのですが、今回投稿する「カーテンさん」という人物は私が小さな頃からずっと頭にあったキャラクターで、どこかに応募するとか関係なくちょくちょく「カーテンさん」について書いていました。
これから「カーテンさん」についてこの場所を使って創作することもあると思います。
一回の分量としては1,2分で読み終えるものばかりなのでもしよろしければ読んでいただけたら嬉しいです。
『カーテンさんと僕』
カーテンさんとはカーテンの中心に穴を開けて、マントのように被っているおばさんのことだ。
地元ではカーテンさんのことを鼻で笑う人もいる。
カーテンさんは夜中の公園を巡回している。
街の中心にあるだだっ広い公園の夜の闇は濃く物騒なニュース沙汰になることは一回や二回のことではない。
これはカーテンさんと僕の話だ。
僕はバイトの帰り道、公園を通って近道をした。人気も少なく外灯のない暗く、静かな夜道。
歩いていると背後に五メートルくらいの距離を保ってついてくる足音があった。
距離を正確に保って響く足音はあまりにも不気味だった。ただし後ろを振り向く勇気も湧かなかった。
次第に足音は大きくなっていく。僕の歩調も速くなる。
恐怖の足音はやがて重なる。
僕の肩に手を置かれた。大きくて重い手だった。
恐る恐る、振り向こうと首を回す。すると振り向く途中で頬に冷たいものを感じ、遅れて痛みがやってきた。ナイフだ。低い男の声が続く。
「後ろを向くな」
さらに続けて響く声。
「財布を後ろに回せ」
あわててポケットの財布を探った。でも手が震えて、なかなか財布をポケットから抜き取れない。
男は言う。「早くしろ」
ちょうどその言葉のタイミングだった。
「うっ」
男の声と倒れる音がした。反射的に後ろを振り向いた。
カーテンさんだ。暗がりで見るカーテンさんの顔は射貫くような鋭い目で男を睨んでいた。
ファイティングポーズをとったカーテンさんは、男が立ち上がって突き出してきたナイフを左手でいなした。右手で男の顎に掌底アッパーを入れた。
さらに上に仰け反った男の胸を跳び廻し蹴りでつき飛ばした。黄色いカーテンがぶわっと広がり、僕の鼻先を掠めた。
倒れて動かなくなった男を確認するとカーテンさんは振り返って僕を見た。
カーテンの内側を手で探り、絆創膏を僕の頬に張ってくれた。震える僕を抱きしめて落ち着かせてもくれた。
「ヒーローだ」
僕が咄嗟にそんな言葉が口をついた。
するとカーテンさんは目を大きく開けた。そして、満面の笑みを浮かべた。
先ほどまでのナイフよりも鋭い表情とは打って変わってその可愛らしい笑顔に僕はつい照れてしまった。へへ。
「私、ヒーローなの」
そう言うとカーテンさんは颯爽と夜の闇の中へと消えていった。
僕はカーテンさんが残した言葉の意味を後に知ることになる。だけど、その時はただ消えていくカーテンさんの背中に見とれていた。
終わりに
読んでくださりありがとうございます。
今回、一から書くくらいの勢いでこの話を書いていると難しさと面白さを感じます。
でも1000文字って短い。でもたくさん削っている内に無駄がなくなっていって結果的に面白さが損なわれることはほとんどないので、普段の自分の書く文章がいかに自分が気持ちよくなるためだけに吐き出しているのだということを痛感します。
読んでもらえる人を想定して書評、創作含めて精進していきます。
今後もどうぞよろしくお願いいたします。