書評・感想

【初体験こそ正義!】羽田圭介『三十代の初体験』感想

17歳でデビューし、29歳に『スクラップ・アンド・ビルド』で芥川賞受賞した作家、羽田圭介さんのエッセイです。

羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』【第153回芥川賞受賞作品。閉塞感の中で可笑しみ漂う新しい家族小説】私の中で羽田圭介さんは一番、顔が浮かんでくる作家です。 テレビなどの露出も多いですし、高身長でしっかりした顔つきも覚えやすく、ギャ...

テレビへの出演も多く、日本で最も顔を知られている小説家の中の1人と言えると思います。

YouTubeチャンネルも持っていて更新は不定期ですが私自身、登録して追っています。

小説を書く上でのガジェット紹介、お気に入り家具紹介、そのほか、モブログだったり、時には大量のクッキーを焼いたり、面白い!

羽田圭介・YouTubeチャンネル

そして今日紹介するエッセイ『三十代の初体験』!

「週刊女性」の連載エッセイをまとめたものです。

目次を見て即購入してしまったのですが、31歳から34歳までの初体験がずらっと並んでいます。

連載エッセイのためのネタづくりもあり、本当にジャンルが多岐に及んでいて興味深い。

ゴルフとか人間ドックとかは想像つきやすいですよね。でも猫レンタルとか狩猟体験とかもう様々、なにそれと思えることばかり。

自分自身の世界を笑いと共に広げてくれる面白い一冊を紹介します。

『三十代の初体験』の説明

17歳で小説家デビューし、29歳で芥川賞を受賞した
羽田圭介は30代になったとき、精神の微妙な変化に
危機感を抱き、「初めて」の体験を敢えて自分に課した。

31歳から34歳まで、4年間かけて挑んだ数々の「初体験」は、〝微妙な年齢〟に達した著者の「問い」から始まっている。

「身体の元気な三十代のうちにやっておいたほうが人生を豊かにできることが、自分の今の生活の外側に色々とあるんじゃないか?
三十代前半は、体力が要るようなことはもちろん、身体の一部である脳を用いてなにかを習慣化させたり、習得したりすることが可能な、最後のスタート年齢となるかもしれない」
(「はじめに」より)

苦手意識や偏見を持っていたことに触れてみたとき、凝り固まった思考にハッとすることがある。憧れていたことを実際に体験してみると、意外にも「恐ろしさ」に気付くことがある。

新たな資格を取りたいけど、自信がない。
何か趣味を持ちたいけど、続かない。
転職したいけど踏み出せない。

大人になるにつれて、自分の得意なこと、苦手なこと、
できること、できないことの幅を決めつけてしまい、「初めて」に挑戦することを意識的に遠ざけていないだろうか――。

時に能動的に、時に偶発的に新しい体験をする――。
羽田圭介があるがままの姿と思考の変遷をさらした本書は、新しい道へ一歩だけ踏み出し、人生に豊かさをもたらすきっかけとなりうる、自己啓発本のような側面もある体験エッセイ。

「30代って、思い出の品を処分するときにそれなりに考えることがある年齡。人生でやるべきこと、やれないこと、やりたいけどできないことを分別して
考えるようになった人間が、後悔しないために、いろいろやっていく変な姿を楽しんでもらえたら」
(「はじめに」より)

◆目次
三十一歳の初体験
1 ホテルで朝食
2 市ヶ谷の釣り堀
3 ジェルネイル
4 女子中高生向けの映画
5 ふうろうカフェ
6 アイロンビーズ
7 俳優になる
8 築地市場で買いもの
9 市場で食事する
10 トランポリンエクササイズ
11 ミュージカル出演
12 十二単を着る
13 高地トレーニング

三十二歳の初体験
14 クリスマスケーキ作り
15 料理専門の家事代行
16 アユールヴェーダ
17 リアルな旅 と VR飛行
18 卓球教室
19 猫レンタル お出迎え
20 猫レンタル お別れ
21 VRアトラクション
22 ダンス教室
23 人間ドッグ
24 ゴルフ教室
25 ラップ教室
26 サッカーW杯観戦
27 黒染め
28 4時間かけた女装
29 原作小説のドラマ化の現場
30 パーソナルカラー診断

三十三歳の初体験
31 ユーチューバー
32 ユーチューバーになる
33 子ども向けユーチューブ教室
34 応援上映
35 もの壊し放題の空間
36 フラワーアレンジメント
37 メダルゲーム
38 サウナフェス

三十四歳の初体験
39 ボルダリング
40 ストレッチ専門店
41  ぶり一本釣り
42  サバ漁
43  古着を買う
44  瞑想
45  インナーケア&肌診断
46  狩猟体験

ここからネタバレ注意!

三十代の初体験の感想(ネタバレあり)

何それっていう項目が並んでいます。

しかもそれらの体験記がさすが小説家と言えるべき文章で綴られていて思わず笑ってしまう。

一つ抜粋しますが、例えば「トランポリンエクササイズ」の段では、

 しんどい。懸垂等のトレーニングを日頃やっているから僕はなんとか耐えられるもの の、同行していた編集者やカメラマンがやっていたら、間違いなく吐いていると思う。すると先生が再び、

「メークサムノーイズ、×※□」

きたか、と思った僕は疲れながらも丹田に気を集中させ、

「うわーーーーー!!」

と、他の客たちの「イェーイ!」をかき消す大声というか雄叫びを出した。そしてすぐ、場違いだと自覚した。これではクラブのコール&レスポンスではなく、士気を上げるスパルタの兵士みたいだ。

テレビや動画など映像媒体であれば芸人さんなどのリアクションが映えるように文章にしてしまえばやはり小説家すごい!いや、これは羽田圭介さん特有の言葉選びのセンスも大きくありますね!

数々の個性的な項目をその独特のセンスと頭にパッと広がる文章力で綴られています。

私としては、

「原作小説ドラマ化の現場」

「ユーチューバー」「ユーチューバーになる」

「サウナフェス」

「ボルダリング」

という項目に惹かれて読んだわけですが、このトランポリンもそうですし、全てが面白く読ませてもらいました。

終わりに

サクサク読めるからもし目次に読んでみたいという気持ちが浮かんだらぜひ読んでみてくださいね。

初体験って年齢と共に少なくなっていくものだと思いますが、実は意識次第でたくさんの初体験イベントを見つけることができて、自分次第で自分の世界を広げていくことができることに気付かされました。

私も最近になってipadやgoproを使って遊んでいると、ワクワクした気持ちになっていつの間にか1日終わっているくらいの集中力を発揮していたりして驚くことがあります。

どんどん可能性を広げて新鮮な楽しみを自分に供給していきたいと思う毎日です。

ABOUT ME
いちくらとけい
社会人の本好きです。現在、知的障害者の支援施設で働いています。 小説を読むことも書くことも大好きです。読書をもっと楽しむための雑記ブログを作りたいという気持ちで立ち上げました。

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