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横田増生『潜入ルポamazon帝国』感想【「巨大企業」の光と影】

今、アマゾンが生活習慣の一部になったと言える人はどれくらいいるのでしょうか。

私自身、間違いなく生活の中でアマゾンは切っても切り離せないものです。

近くに大きな書店がないので書名の分かる欲しい書籍はアマゾンで買いますし、食事中はamazonprimeで好きなバラエティ番組やアニメ、ドラマを観ることが多いです。服も好きなメーカーの服を検索して購入することもあります。

忙しくなればなるほど重宝し、そして使えば使うほどはまっていくアマゾン。

消費者側から見ると便利さで有難さを感じるばかりなのですが、その有難さの背景にはどんな世界が広がっているのでしょうか。

ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストは、アマゾンのことを、

「最も秘密主義のテクノロジー企業」

と呼んだそうです。

そんなアマゾンの秘密を物流センターの潜入ルポから、配達業者への同行、取材等によって様々な視点から解き明かす入魂の一冊です。

ここからネタバレ注意!

潜入ルポamazon帝国の感想(ネタバレ)

著者・横田増生さんについて

横田増生さんがアマゾンの物流センターに潜入したのは今回でなんと2度目です!

2002年の年末から約半年にわたって一度市川塩浜の物流センターに潜入し『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』を上梓しています。

他の著書にはアルバイトとして潜入巣材を敢行した『ユニクロ潜入一年』もあり、身体を張って活躍されているジャーナリストです。

物流センターで働く労働者、アマゾン社員の現状

第1章では実際に物流センターに潜入した横田さんの体験記が詳細に記されています。

ハンディ―端末を持って、倉庫内で注文品をピッキング作業、要は注文品を探して取って配送工程へと流す作業仕事です。

勤務体系や物流センターの食堂の様子など実際に想像できるくらい詳細に書かれています。今日本では物流センターで働く人の大半はアマゾンとの直接雇用ではなく、派遣会社を通して働く人ばかりだそうです。

時給はこの潜入取材の当時で1000円ですが、クリスマス時期までなど忙しい時期に合わせて時給5割増しなどの募集があるなど人を集めるための工夫が行われることも。

ただし、週20時間以上勤務を続けることや遅刻早退欠勤状況など5割増しのための条件は細かく設定されています。

派遣会社の社員がアマゾンのことを「アマゾン様」と呼んでいて立ち位置を表しているようで私も読んでいて笑ってしまいました。

広大な倉庫内で一日20キロほど歩くような体力の使う仕事なので倉庫内で意識を失うなどの事故があることも。気づかれるまでの時間がかかること、気づかれた後救急車を呼ぶまで時間がかかり死亡事故に繋がったケースがあったことが書かれています。

そしてピッキングをこなした数など作業効率を数値化したものが掲示されるなど、より正確により速く業務をこなすための施策というか管理がなされています。アルバイト内でも「ワーカーさん」、「トレーナー」、「リーダー」、「スーパーバイザー」と序列ができています。

この物流センターの現状から実際のアマゾン社員の話が綴られている第2章に入ります。

物流センターの労働者の扱いの酷さから社員のパワハラと思えるような環境についての告発です。

アマゾンに限らずよく聞くような自主退職に持っていく過程などの話が載せられています。

中にはやりがいを持って悪い部分を変え、かつさらに発展できるように働いている社員もいるはずでプラス面からの話も聞いてみたい気がしますが、ただこれだけの大企業ですから「どこの企業にでもある問題」と流すことはできない事実だとも思います。

海外ではドイツで組合活動によって待遇が改善されている例もあります。

ただアマゾンとの直接雇用というのが肝で日本など派遣会社を通じて雇用されている現状ではハードルが高いということです。(日本でも派遣会社を間に挟まない直接雇用に向けてアマゾンが舵を切ったこともあります。残業や勤務日の指定などの労働条件が労働者に合わず人が集まらずとん挫したそうです)

時代的にも労働環境について話題になることが多い昨今で、今後どのような歩みを進めていくのでしょうか。

配達ドライバーの現状

宅配ドライバーに同行し、大量のアマゾン注文品をどのように配達しているのかが第3章で書かれています。

配達個数も採算についてもシビアな世界で働いていることが伝わってきます。

改めて時間指定した配達物についてはしっかり受け取れるようにするということを感じました。人が動いていますからね。

また、アマゾン注文品をまず旧ペリカン便が受け、後に佐川急便、そしてヤマト運輸へと変わって歴史も説明されていました。

採算とシェア率で変わってきているのですが、今はヤマト運輸が引き受け、ヤマトが残業代未払い問題が出てから業務改善が行われ、デリバリープロバイダと言われる新興配達業者がヤマトの受けられない部分を引き受けているという話です。

採算についてはいまだ厳しい現実があるので今後持続可能な配達の仕組みができるのでしょうかと締められています。

私が何をどうというわけではありませんが、いまだ配達員に横柄な口調の人もいるようで、受取指定時間についての意識と配達員に感謝の気持ちは持って接しようと思いました。

「後悔を最小限にする枠組み」を進むジェフ・ベゾス

言わずと知れたアマゾンの創始者です。彼の歴史が書かれています。

アマゾンの始まりや、経営危機について、離婚の過去など多岐に渡っています。

ベゾスの、

「まず80歳になった自分自身をイメージしてみるのです。そして人生を振り返り、後悔を最小限に抑えるには何をしていればよかったのか、と考えたとき、この爆発的に伸びているインターネットに懸けてみることで、それが失敗に終わったとしても後悔することはないな、と確信が持てたのです。それより、このインターネットの大波を何もせずに見送ってしまったら、一生涯そのことを後悔するだろう、と思いました。そう考えれば自ずと進む道は決まりました」

という”後悔を最小限にする枠組み”の考えは好きです。

アマゾンが突き進む集団となり得た原点が感じ取れます。

アマゾン経営の3つの主軸

主軸となる3つの事業とは、

  1. マーケットプレイス
  2. アマゾンプライム
  3. AWS

マーケットプレイスは外部の業者にアマゾンの販売ページを提供することです。

出品者から手数料をとることで自分達が売る以上の利益を出すことができます。

アマゾンが今日”エブリシング・ストア”と呼ばれているのはこのマーケットプレイスの出品者に負う部分が多いでしょう。

別の章では出品者の苦悩も書かれています。集客が抜群なので利用しているがどうしてもアマゾン優位の関係になり手数料に苦しんでいるという内容です。

アマゾンとの二人三脚で収益を伸ばしていく中でアマゾンからの卒業する道筋を考えているバリューブックスの考えが印象的でした。

アマゾンプライムは会員サービスの名称です。

プライム会員は送料無料など各種の特典を受けることができます。

配送費が持ち出しになるなど社内の反対意見も多かったようですがベゾスは反対意見を封じ込めます。

プライム会員になると各種サービスを使い切り年会費の元をとろうという顧客心理は私自身利用しているのでよく理解できます。

配送料だけでなく映像、音楽などコンテンツを増やして現在では優良のプライム会員数が全世界で一億人を超えたそうです!大成功の定額サービスですよね。

AWSはクラウドサービスです。

実際にサーバーを購入・設置することなくネット上に作る仮想サーバーや大量のデータを保存するストレージ、データベースなど多岐にわたるサービスを提供しています。

具体的な企業の活用例も取り上げられていて、〈Amazon Polly〉というAWS上の深層学習を利用して文章リアルな音声に変換するサービスと自社開発の音声読み上げシステムを組み合わせてAIアナウンサーが誕生しているそうです。

凄い!

各企業が使いこなすことで私達の生活も一変するようなAWS。クラウドサービス事業でシェア率1位でしかも利益率の高いアマゾンの主軸事業です。

アマゾンをグレーな裏技で利用するレビューアーたち

フェイクレビューという言葉を聞いたことはありますか?

商品を無料でもらい受けてその代わりに依頼された評価をすることです。

ステマ(ステルスマーケティング)レビューとも言われています。

無料でもらった商品を転売するなどをして利益を得るレビューアーがいるそうです。フェイスブックで0円仕入れのためのグループがあるそうで驚きました。

さらにはそのフェイクレビューの輪をマニュアルとして広げていく「サブセラー」というねずみ講手法もあるようです。

レビューを参考にしてきていた私にとっては残念な情報でした。だから限りなくブラックですけど成り立っているのでしょうが。

感想まとめ

その他にもアマゾンの租税回避についてや出版社との直接取引が進んでの実害など色々と書いてありました。

ただただアマゾンの巨大さを感じさせられる書籍でした。そしてただ便利だということではなくて間に入っている出品企業や出版社、配達業者など「搾取」ともいえる苦労がそこにはあることを知ることができました。

拡大し成功した企業の取り組みについて学ぶこともありますし、その一方で影となっている部分も知ることは大事です。

とてつもなく大きくなった企業を多角的に見ることのできる興味深さ満点の一冊でした。

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一蔵とけい
一蔵とけい
社会人の本好きです。現在、知的障害者の支援施設で働いています。 小説を読むことも書くことも大好きです。読書をもっと楽しむための雑記ブログを作りたいという気持ちで立ち上げました。

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