米澤穂信さんが高校を舞台に繰り広げる切れ味抜群ミステリー。
米澤穂信さんは『氷菓』、『王とサーカス』、『満願』など評価の高いミステリーをたくさん残している作家さんです。
私自身、ここ数年で出会った作家さんの中で一番に近いくらい好きな作家さんでもあります。
伏線の切れ味鋭い謎がはびこる世界も魅力ですし、なんといっても登場人物が魅力的!
魅力的なキャラクター×考え込んでしまうような深い感情×あっと驚く謎なんて最高ではないでしょうか。
この作品は現時点での米澤穂信さんの最新作で「これはくる!」と思った作品でもあります。
あらすじ
高校2年生で図書委員の僕(堀川次郎)には時々頼まれ事が持ち込まれます。
それぞれの頼まれ事は謎に満ちています。
同じく図書委員でウマが合う松倉詩門と謎に挑んでいく全6編の短編集の形式です。
それぞれの短編で謎自体は解決していきます。
高校2年生という時間の中で謎に挑む内に堀川と松倉の関係の変化やそれぞれが抱えているものが浮かび上がっていく推理と友情の物語です。
本と鍵の季節の感想
謎がお洒落で唸るような面白さがあって、さらにタイプは違うけども堀川次郎と松倉詩門の2人が魅力的なので、読む手を止められないくらい楽しい読書でした。
堀川次郎も松倉詩門も挑んでいる謎に対して、アプローチは違っても惚れ惚れするような頭のキレを見せます。
でも謎に対しての感想や普段の会話は高校生らしいというか言葉尻は癖があっても真っ直ぐでいいやつで、雰囲気も堅苦しくなくどこか冗談みたいです。
それについ自慢っぽい口調になってしまって恥じて赤面したり、気遣いのない会話をしてしまって後悔してくよくよしたり、普段は大人っぽいのですが、時折見せる多感な時期を感じさせる会話が微笑ましかったです。
自分の言葉で相手がどういう気持ちになるのかに考えを巡らせることは大人でも大事ですけどね。
ちゃんとしないと(私が)。
刑事のコンビが仕事として謎に取り組む話にはがちがちの真剣勝負での面白さがありますが、この高校生コンビが少し異質だけど自然に謎に向かう話が新鮮で読んでいて爽やかな気持ちにもさせられます。
それにこの物語の謎には題名の通り、本が大きく関わる謎ばかりです。
私たちも学校の図書館や地域の図書館に行ったことない人はそういないと思います。身近な題材の中で、「あ、こういう見方できるんだ!」と思えるような驚きが多くて、きっと誰でも入りやすくて楽しめる話だと思いました。
あとこの物語には小さな伏線と大きな伏線があって、それぞれの短編が上記したようにとても面白く読めますが、段々とこの本は堀川、松倉2人の高校生の話なんだと気づきます。
内容は触れませんが、短編の中でも気になって手を止められなくなるのに後半は短編が一区切りついても2人のことが気になって、仕事のことが浮かんで泣く泣くしおりを挟んでという繰り返しでした。
終わりに
大好きな小説です。
この小説には読者としての思い入れがたくさんあります。
きっとこれからもっと盛り上がる小説だと思っています。
なぜかというと私の中で今まで好きと思っていた雰囲気から外れているのに面白さを感じたからです。
登場人物の気持ちの深さだけではなくて物語の枠組みの魅力というかうまい言葉は見つかりませんが小説の面白さを倍にしてくれたような気持ちになりました。