極上のアート短編小説集!
原田マハさんは『楽園のカンヴァス』、『暗黙のゲルニカ』などアート作品を扱った人気小説を多数発表しています。
そもそも原田マハさん自身が早稲田大学の美術史学科を卒業していてニューヨーク近代美術館に勤務していた経歴を持つ作家さんです。
私はよく上野に行くのですが上野公園を散策すると美術館周りの行列を見てブームを肌で感じます。
実際、私自身も今年に入ってピカソ展やフェルメール展に行き、美術に疎い私でもその広がる世界にわくわくどきどきして感嘆しました。
今まで美術館に行ったことのない私が美術館に足を運ぶきっかけになった小説がこの原田マハさんの『常設展示室』です。
小説×絵画。
この新しさも感じるすばらしさを堪能できる小説を紹介します。
あらすじ
人生の岐路を立つ人々が世界各地の美術館で出会う運命の一枚との物語です。
6篇の短編集でそれぞれ人生のきらめきのような瞬間が絵画との出逢いを通して描かれています。
原田マハ『常設展示室』の感想
それぞれの短編は絵画にまつわる仕事に就いた女性の人生の話です。
そしてそれぞれの短編で女性が人生の岐路で運命的な一枚の絵との出会いがあります。
本当に素敵な短編集に出会ったという気持ちで一杯です。
美術を基調として彩られている物語なので全体として落ち着いていてしっとりとした味わい深さがあります。
そして雰囲気だけの短編ではなくてそれぞれに登場する女性の人生の物語なので深く、どこか物哀しく、それでいてきらめきがあります。
なんで物哀しさを感じたのだろうと考えた時に、この本はどの短編にも別れだったり、別れの予感が流れているからだと思いました。
今まで色んな別れがありましたが自分の頭の中に浮かぶ大きな別れには思い出すと浮かぶ風景や音楽があります。
それをふと思い出す瞬間に感慨深い気持ちになったことってありませんか。
この女性達には絵画があります。
出てくる絵画は実際の芸術作品がほとんどなので、アートに疎い私は検索しながら(スマホ本当に便利笑)読んでいるとその絵画の雰囲気も重なってすとんと物語が胸に落ちました。
特に「デルフトの眺望」が好きです。最後、少し泣きました。ずるい笑
どの話も芸術作品を取り扱っていますが堅苦しくなく読みやすいです。
短編には繋がりはありませんが、中にはある短編で出てきた人物が別の短編で出てくるおまけみたいな嬉しさもありました。
原田マハ『常設展示室』感想まとめ
大好きなものを描いた小説ということが作家の個性なのではないかと思いました。
私は原田マハさんの描く絵画との出逢いに感動した人物の描写を見て泣きそうになった場面りました。
これは絵画に感動の経験を持った作家でないと書けるような小説ではありませんよね。
小説を通して、興奮して感動してその分野に興味を持って美術館に行きました。
新しく開けた自分の世界が嬉しくてこの『常設展示室』は私の中でただの面白い小説ではなくて思い出深い特別な小説になりました。