2020年本屋大賞ノミネート作品です。
大阪の下町で育ち、小説家を目指し上京した夏子の物語です。
38歳になった夏子には「自分の子どもに会いたい」というひそやかな願いをかかえています。
パートナーなしの出産を目指す夏子の想いら周りの人々の考え方や想いが交わされ影響を受けます。
切実な願いは生命の意味や、切ない詩情と泣き笑いと共に描かれる強い小説を紹介します。
内容紹介・あらすじ
大阪の下町に生まれ育ち、小説家を目指し上京した夏子。38歳になる彼女には、ひそやかな願いが芽生えつつあった。「自分の子どもに会いたい」――でも、相手もおらんのに、どうやって?
周囲のさまざまな人々が、夏子に心をうちあける。身体の変化へのとまどい、性別役割をめぐる違和感、世界への居場所のなさ、そして子どもをもつか、もたないか。悲喜こもごもの語りは、この世界へ生み、生まれることの意味を投げかける。
パートナーなしの出産を目指す夏子は、「精子提供」で生まれ、本当の父を探す逢沢潤と出会い、心を寄せていく。いっぽう彼の恋人である善百合子は、出産は親たちの「身勝手な賭け」だと言う。
「どうしてこんな暴力的なことを、みんな笑顔でつづけることができるんだろう」
苦痛に満ちた切実な問いかけに、夏子の心は揺らぐ。この世界は、生まれてくるのに値するのだろうか――。
芥川賞受賞作「乳と卵」の登場人物たちがあらたに織りなす物語は、生命の意味をめぐる真摯な問いを、切ない詩情と泣き笑いの極上の筆致で描き切る。
ページを繰る手が止まらない、エネルギーに満ちた世界文学の誕生!
(「文藝春秋BOOKS」より)
夏物語の感想
きっとこの物語を読んで心に響く部分は読む人によって違うのだと思います。
生命や自分の生き方を考える作業は少なからず誰でも真剣に考える部分だと思います。
この小説の夏子をはじめとする登場人物の想いや考えは切実で、迷いにも満ちているのだけど揺れ動かない強さを感じます。
だから、ふとした心情描写でいきなり私の心をガッと掴まれるような想いをすることもありました。
面白い小説はたくさんあってそれぞれ自分自身を満たしてくれるのだけど、この『夏物語』は人のすごく大事な部分と響き合う特別な作品でした。
いくつかある自分自身の本当に大切なものが頭に浮かびながら読み進めました。
活字って時々心に直接打ち込まれるような力を持ってるんですね。久しぶりに改めて感じました。
終わりに
何気ない一文が妙に自分の気持ちに残る小説でした。
本気の小説をいうのはこういう小説を言うのだと感じた作品でもあります。
今、ウィルス関連のニュースも多く、私の職場でも色んなイベントが中止になっています。私自身も用事がない限りは休みも人混みを避けるような行動になっています。
施設勤めなので私がかかってもし施設の利用者にうつしてしまったらと想像すると本当に恐ろしい。施設の利用者はマスクを外してしまう方も多く、一気に広がることが予想されます。
でも、休みが退屈かと言われればそんなこともなくて、この『夏物語』も含めて読書の楽しさを満喫しています。
ちょっと仕事上でしんどいことも多くてアウトプットのスピードがなかなか上がらないでいるのは課題ですが、来月本屋大賞の発表もあるし、ここで気になる本をたくさん読んでしまおうと楽しみはたくさんあります。
もし私と同じようにお休みに家で過ごすことが多くなっている方がいらっしゃいましたら、この『夏物語』、私は休みに何かを残してくれて、読んでよかったと思えた読書なのでお勧めです。