窪美澄さんの小説を読むと文章の持つ力を感じさせられます。
自分の普段生きている中で感じている気持ちはうすっぺらな氷のようなもので「窪美澄の小説」というハンマーでたたき割られるような感覚です。
読後明るくなれるものもあれば考え込んでしまうようなものもあります。
とても読みやすい文章で面白く読めているのに最後にはいつもどんな気持ちであれたたき割られています。
今回紹介する『アカガミ』は読んでいて苦しくなるような小説です。
でもただ苦しくなるだけではなくて「よかった」と思えてしまうような終わり方でもあります。
いつか窪美澄さんのツイッターで「ダメダメモードの時に書いた」というようなコメントを見たことがあります。
著者が苦しんだ中で生み出した作品は読んで楽しくなれるかはどうあれ、苦しみ抜いて紡いだ言葉に力がこもらないはずはありません。
その力を感じてもらいたく紹介させてもらいます。
Contents
あらすじ
2030年の日本が舞台のSF小説です。
渋谷で出会った謎の女性に勧められミツキは国が設立したお見合いシステム「アカガミ」に志願します。
パートナーに選ばれたサツキとの生活は国によって手厚く護られ愛情が芽生えます。
国に異常なほど手厚く護られ管理される謎の多いアカガミ制度の中で家族を作っていくミツキやサツキの話です。
アカガミの感想(ネタバレなし)
近未来の話なのでアカガミの制度も架空のものです。
amazonのカスタマーレビューを見ると結構辛辣な意見も多い。
確かに近未来の話は舞台設定やアカガミの制度について突っ込もうと思えばいくらでも突っ込める話だと思います。
全体的に不安や悲壮感みたいな雰囲気が流れていて人によっては読み心地が良くないように感じる人も多いのかもしれません。
それでもネガティブな気持ちに潜って呼吸しようと悩む姿は心に残ります。マイナスからゼロに向かうくらいのレベルかもしれませんが。
私は読んで1年以上経って本棚を眺めた時にパッと内容が浮かぶ本て多くないのです。
ただ、この小説ははっきり頭の中に残っています。
そういう驚きは無意識下で働いていて、読んでしばらく経ってから気づく感想です。
著者の窪美澄さんがツイッターで「人生史上、心身共に1.2を争うくらいダメダメモードの時に、書かないと前に進めないよーと泣きながら書いた」とツイートしていました。
ぎりぎりのところで書き上げられた作品の力を感じることができる本です。
終わりに
ネタバレは極力なくして書きました。SF小説の場合、ネタバレを私が書いた場合に安っぽく感じられてしまうのを恐れたからです。
ぜひ、頭の中に残るこの小説を読んでもらいたいという気持ちがあります!