2021年本屋大賞第2位作品!
図書室の司書さんが人生の後押しする心が温かくなるような小説です。
図書室という響きが懐かしい!
小学校や中学校の図書室に通うのが好きな時期が私自身ありました。
この小説の中には名物司書さんが登場します。
場所は小学校に併設されたコミュニティハウスの中の図書室。
その司書さんは不愛想だけど聞き上手。そして少し不思議な空気を纏っています。
司書さんの思いも寄らない選書と可愛い付録(⁉)は登場人物に力を与えていきます。
いつもの日常がいい方向に動き出すような小説はいかがでしょうか。
あらすじ
悩める人々が立ち寄った小さな図書室がターニングポイントとなる5編の短編集です。
小さな図書室には不愛想だけど聞き上手な司書の小町さんがいます。
小町さんは思いも寄らない選書と可愛い付録で立ち寄った人々の人生を後押しします。
SNS上でも大きな話題となり、2021年本屋大賞第2位の励まされるような温かい一冊です。
『お探し物は図書室まで』の感想
魅力的な小町さん
司書・小町さんのフルネームは小町さゆりさん。
帯や目に入ってきていた簡単な感想などをみる内に私の中では、
なんとなく穏やかな雰囲気を纏って、落ち着いていて、親身になって相談を乗ってくれる女性というのを私は想像していました。
でも実際には、
ものすごく……ものすごく、大きな女の人だった。太っているというより、大きいのだ。顎と首の境がなく色白で、ベージュのエプロンの上にオフホワイトのざっくりしたカーディガンを着ている。その姿は穴で冬ごもりしている白熊を思わせた。ひっつめられた髪の頭の上には、ちょこんと小さなおだんご。そこにはかんざしが一本挿してあり、先には上品な白い花飾りの房が三本垂れていた。
え?
想像とは違いました。落ち着いているし相談を邪見にするわけでもなく、想像の反対というわけではありません。
とても個性的な雰囲気を持っていたのです。
容姿を引用しましたが言葉も想像とは違います。第1章で恐る恐る声をかけようとしている朋香さんに小町さんは一言、
「何をお探し?」
強いインパクト。
初登場時、小町さんのそんな姿が印象的で、驚きと共に物語に引き付けられていく感覚になりました。
そして読み進めていくと、急に笑い出したり、漫画の話題で盛り上がったり、色々な小町さんの姿を見ることができて読み終える時には小町さんの魅力にくらくらでした。
また紹介する本には意外な本も混じっていますし、可愛らしい付録もつけてくれるので、登場人物にとっての作用がどのように働くのか読みながら知っていくのは楽しかったです。
悩める5人の主人公
図書室を訪れるそれぞれの短編の登場人物はそれぞれ年代も性別も違う人たちです。
読者に近い年代の主人公にうんうん頷きながら共感と共に読んで楽しむこともできるし、過去のことを思い出しながら、こういう悩みあるよね、と楽しむこともできます。
また未来の自分を思い浮かべながら年上の主人公の姿を自分自身の未来と重ねて応援していまうこともあるかもしれません。
今あげたのは私が読みながら感じたことでした。
目次を見た時に
一章 朋香 二十一歳 婦人服販売員
二章 諒 三十五歳 家具メーカー経理部
三章 夏美 四十歳 元雑誌編集者
四章 浩弥 三十歳 ニート
五章 正雄 六十五歳 定年退職
楽しみな章とそこまで楽しみに思えない章があったのですが、読んでみたらどれも上記したような面白みを感じました。
それぞれの登場人物の穏やかで、でも自分にとっても身近な重みを感じる心中は自分にすんなり馴染んで読むことができました。
それに各章の内容的な繋がりはなくても小町さんに魅せられていたのでぐいぐい読まされていきました。
終わりに
なんといっても司書さんのキャラクターは個性的でとても印象的です。
選ばれる本は本の質問をした登場人物以上に僕も不思議で、でも読み進めると温かい物語に繋がりほっとしました。
青山美智子さんの小説は面白いとは聞いたことがあったのですが今回初めて読んで素敵なお話を堪能させていただきました。
読みやすいし、安心して身を委ねることができる読書でおすすめです。