エモい小説と評判で手に取った本です。
エモいという言葉の意味をうまくつかめなくて多発する知人を見てはすごいという気持ちとよく伝わってこない感覚にヤキモキすることもありました。
でもこの小説を読むとエモさというのがなんだかつかめたような気がします。
空気感が生々しく伝わってきて、ノスタルジーを感じるような雰囲気が新しくて魅了されました。
Contents
あらすじ
43歳のボクはふと手癖で開いたフェイスブックに表示された「知り合いかも?」の欄に目が止まります。
そこにはかつて自分よりも大切な存在だった元彼女の名前が表示されていました。
電車が大きく揺れてつい押してしまった友達申請の送信ボタンと共に大切だった彼女の記憶が蘇っていきます。
90年代から今にかけての空気が記憶の切なさとともに浮かび上がるような物語です。
ボクたちはみんな大人になれなかったの感想
読み終わってこんな小説があるのかと驚きました。
この小説は固有名詞が多く、ほとんど全てが具体的でかっちり決まってます。
流れている音楽は「クラシック」とか「J-POP」とかいう大きい括りの表記ではなくて「宇多田ヒカルの『Automatic』」とか「ウルフルズの『ガッツだぜ!』」とか。
名前が出てくる場所の名前も原宿のラフォーレとか新宿ゴールデン街。
彼女と観た映画は『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』。
全ての背景がその時代に生きてきた人たちにとってその固有名詞だけで情景が浮かぶような言葉ばかりです。
それは90年代から今を生きてきた人たちからすると臭いの描写なんてなくても埃臭さまで感じてしまうくらい強力です。
私自身も小説の頭から有線で宇多田ヒカルがかかっていてそれだけで震えるものがありました。
分かりすぎるって感覚です!
あとSNSで「知り合いかも?」に元彼女や初恋の人が出てきたときの動揺する感じもよく分かってしまって笑
ついついページを開いて結婚して幸せそうだったりするのも気持ちも含めてやっぱり分かって笑
もうこれはあるあるの域じゃないかな。
ふとしたきっかけでリアルに過去を思い出した時、変わっていない自分の一部分に気づく時があります。
ほろ苦い過去とセットの自分の一部分であっても、それは大事で愛しさも感じてしまう自分だったりする。
少し前にフェイスブックで初恋の人と繋がりました。
その人は幸せそうでそれはそれは良かったのだけど、小学生の時感じていた気持ちが今の私にも分かるくらいに思い出せて、なんか自分ってこんな人間だったって。小さい時の自分と今の自分が繋がると心の底から笑えます。そんなことに気づきました。
そしてこの小説の雰囲気は過去と今を繋げるような気持ちにさせます。きっと読む人にハマればとんでもなくぐっと引き込まれる話だと思いました。
色々語ってしまいましたが読みやすくて分量も少なめなので気軽に読める本です。そしていい驚きと刺激のある読書でした!
終わりに
かっこいい小説だと読みながら思っていました。
ひとえに小説と言っても書き方は本当にたくさんあって一つの物についても表現の仕方で雰囲気ががらりと変わるものだと勉強にもなりました。
きっと平成から令和になったこのタイミングでの流行ったものや音楽が十年くらい経過したら懐かしさと一緒に感慨深い気持ちになるのだろうなぁ。
笑顔で思い出すためにも今を頑張ろうと思います。