湊かなえさんの新・青春小説!
湊かなえさんは『告白』でデビューし本屋大賞を受賞し、次々と映画化やドラマ化されるような作品を多く生み出している作家さんです。
また読んだ後に魅力ある嫌な気持ちになるミステリー「イヤミス」の女王とも呼ばれているようです。
(嫌な気持ちの奥底に考えさせられるような深い心情や物語が流れているという意味です)
その湊かなえさんの青春小説が『ブロードキャスト』です。
イヤミスの女王なんて言葉を出してしまいましたがこの小説に重く苦しい読後の余韻はありません。
ただ湊かなえさんだから描けるであろう人間関係や登場人物の気持ちがこの作品の中に散りばめられています。
あらすじ
中学時代陸上部だった圭祐は高校ではある理由から陸上を諦めます。
そして同じ中学出身で将来脚本家を目指す正也に誘われ放送部に入ることになります。
陸上への未練などうまく気持ちの切り替えが出来ずにいる圭祐が、クラス内、部活内のはっきりしないようなもやもやする人間関係の中で、放送部の面白さに目覚めていく物語です。
ブロードキャストの感想
爽やかな文章で高校生活の熱くて真っ直ぐでとても面倒で複雑な問題も孕んでいる日々が描かれています。
圭祐だけではなく、正也も、同じ学年で放送部の久米さんも、先輩部員も、陸上部の顧問も、その他色んな人物が出てきてそれぞれの登場シーンでは気持ちの主張をしています。
が、読後、ほとんど全てがすっきりした気持ちで読み終えることができました。
読後感、いい!
高校生活って、部活をして仕事みたいにお金をもらうわけではないのに、趣味嗜好、夢や目標の違う人間が同じくくりで活動をするって乱暴で、でもだからこそ力強く動いた時にわくわくしてしまう。
私は悩んでぐずぐずになっている人間がふと強い感情に突き動かされて自分を進める話が好きみたいです。
だから圭祐が強く気持ちを主張する場面とか大好きです。
湊かなえさんの他作品に比べると読後の重い余韻はありません。
でも帯にもありましたが、夢と友情、嫉妬や後悔。大人への反発と扱われている題材は実は重いです。
そして人間関係もとても複雑です。
爽やかだし、読後もすっきりしているけども、高校生の人間関係、感情が繊細に動いている小説でした。
青春小説好きな方や、放送部の活動や脚本やストーリ作りにもよく触れられているので興味を覚えた方はきっと物語以外にも楽しくなれると思うのでお勧めです。
ブロードキャストを読み終わってから感じたこと
作品の多くがドラマ化、映画化されていて著者自身もテレビ番組に出演するなど活躍されている湊かなえさんが初めて挑む学園青春小説。
この言葉でついつい手に取ってしまいました。
読んで思ったのは作家さんも色んな物語に挑戦して変化していくのだということ。
同じ作家さんの作品を続けて読む時に前の面白かった作品を期待して読んでそれ通りになる楽しさは確かにありますが、期待をいい意味で裏切られる楽しさというものもありますよね。
私は陸上部から放送部という異例の設定も面白くてぐいぐいと読み進めることができました。
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