読み始めると止められなくなる犯罪小説にして、痛切なる恋愛小説!
早瀬耕さんは先日『プラネタリウムの外側』でも紹介させて頂きましたが洒落家あるセンスある文章でハッと思わせる面白さのある作家さんです。
今回の小説は文芸評論家の北上次郎氏に、
「これほど素晴らしい小説はそうあるものではない。」
と言わしめた傑作です。
私も同じく「もっと広く読まれるべきだと思う」小説を紹介します。
Contents
簡単なあらすじ・説明
ITプロトコルの中井優一は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっています。
同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた優一は帰国の途上、澳門の娼婦から予言めいた言葉を告げられます。
「あなたは王として旅を続けなくてはならない」
やがて香港の子会社の代表取締役として出向を命じられた優一でしたがそこには底知れぬ落とし穴が待ち受けていました。
未必のマクベスの感想
洒落気のある文章はもしかしたら好みは分かれるかもしれません。
でも私は好きで読みやすく感じました。
内容はドラマにも映画にもなりそうな大きな物語でぐいぐいと引っ張られていきました。
経済小説、犯罪小説、ハードボイルド小説、恋愛小説それぞれのジャンルを大きく横断しているような感じです。
ドキドキハラハラなるほどを繰り返しながら物語は進んでいきます。
何が面白いんだろうと考えた時に魅力的な人物の存在が頭に浮かびました。
年上の上司にして恋人となる由記子、同僚の伴、ビジネスとして優一を助けるカイザー・リー、優一のボディーガードとなる蓮花……と登場する人物がリアルな魅力に包まれていてそれぞれの挙動にどきどきしてしまいます。
それぞれ想いがあって優しさがあるから、そんな人物同士が絡み合っていくとどちらの発言にも引き込まれてしまう。
あともう一つ、『プラネタリウムの外側』もそうでしたが出てくる細かい仕掛けが面白いのです。
『未必のマクベス』のカレンダーのトリックは自分も絵柄も見ながら考え込み、「なるほど!」と思えた瞬間は本当に爽快でした。
ストーリー、人物、仕掛け、それぞれどっぷりと浸かれるような小説でした。
終わりに
知らない世界へと旅させてくれる小説でした。
細かい設定がありそうでそこで活躍する登場人物達の冒険は引き込まれてどんどん引き込まれていきます。
しかも頭を使うような仕掛けがあって、「あぁ、なるほど。面白い」と唸ってしまうような描写も交えて読んでいる内にどっぷり浸かってしまいました。
早瀬耕さんは昨年初めて読んだ作家さんでしたが、面白いと思える新しい作家さんとの出会いはとても嬉しかったです。
『プラネタリウムの外側』とはまた違う魅力の『未必のマクベス』。おすすめです。