緊縛師(縄で人を縛るプロ)の世界が描かれています。
中村文則さんは『去年の冬、きみと別れ』などメディア化されている作品もあり、『教団X』、『銃』など有名な作品を多く残している作家さんです。
また海外でも評価が高く、ノワール小説への貢献で米国の作家、編集者、書店関係者からなる団体の文学賞「デイヴィッド・グーディス賞」を日本人初受賞した作家でもあります。
そして中村文則さんは今の時期話題となっている芥川賞を「土の中の子供」で受賞しています。(第133回)
私も友人に強く推されて読み始めた作家さんなのですが
強烈!
この小説も強烈なインパクトを与えてくれます。
Contents
簡単なあらすじ・説明
アパートの一室で緊縛師の死体が発見されます。
緊縛師とは縄で人を縛るプロのことです。
参考人として名前が上がった女性は刑事冨樫の惹かれていた女性で、彼女の疑惑を逸らすために指紋を偽装するところから話が始まります。
犯人や事件の背景を探っていく話ではありますがマニアックな(あくまで主観です)世界の中で狂気的な愛や信仰や運命が描かれている話です。
その先の道に消えるの感想
これからも私の記憶に残っていく本だということは間違いないです。
すごい世界。
中村文則さんの小説は『教団X』で出会って、読後感があまりよくないけど胸に迫ってくるような文章を書くようなイメージでした。
この話はわりと短くてすぐに読み終えられますが読後感は私にとってはあまり良くなくて読者の好き嫌いは分かれるだろうと思いました。
今後敬遠する人もいるだろうし熱狂的に支持する人もいるだろうと思います。
そう思った1つの理由として重めの性描写がいくつか出てきます。
男目線の性描写というのでしょうか。
なんか男の私が勝手に感じたことを書いちゃいますが、女性から見ると男の妄想的な性描写と言われそうな描写です。
だから、こうやって投稿していますが上記踏まえて興味が湧く人にはおススメできるかなと思います。
くどくど前置きを書いてしまいましたが、緊縛師という分からない世界を突き詰めに突き詰めて生きる人達は、はたからみると変態的(あくまで主観)です。
そこには突き詰められた想いが描かれていて圧倒されました。
私のリアルの世界には落ちていない世界が目の前に広がるのは小説の醍醐味だと思います。
これから求めることもない(と思う)世界ですが、感情を重ねようとすることで擬似体験して、そのそれぞれの登場人物の濃ゆい人生の断片が重なり合いに気持ちが揺れました。
あとがきに著者の言葉として書いてありますが「全ての人生が尊い」のです。緊縛師について無知でしたが、その技術だったり、想いだったりが、さらなる高みへと向かっていこうとする姿勢は魅力も感じます。
死を絡めた異常な世界での必死な姿を何かを訴えようとする力ある文章で読ませる本です。
私は読んで良かったとはっきりと思っています。
終わりに
世の中には色々な奥深い世界があるのだと教えてもらいました。
きっと小説を読んでいなければ知ることもなかった世界です。そういうものを体験させてくれる小説です。
最近、小説の良さというものをよく考えます。
最近の話ですが映画やアニメを見ると技術の進化もあってぱっと眺めているだけで「すごい」と思ってしまって驚きました。
じゃあ、小説はどうなんだろう。
小説の進化って?
一つ思ったのは書き手も情報をいくらでも得られる時代だから詳細に活字で伝えたい情報を描くことができる小説の世界の広がりや作り込みの精度は上がっていくのだと思います。
そして小説はストーリーと登場人物の心情を描くことに長けていると思うので読んで伝わる感情も深く、幅広くなっていくはず。
実際私も一日小説を読んでどっぷりストーリーや登場人物の心情に浸かってくらくらしていること多いです。これは小説ならではです。
私は今回紹介した中村文則さんの小説も含めて自分の頭の外の世界に埋没することができて驚きと共に楽しむことができました。