皆さまいかがお過ごしでしょうか。
突然ですが、
新年度で新学年や新学校、新しい職場など変化の多いこの時期、春の空気を感じるとなんだかそわそわしませんか?
私は先日暖かい日は急にやってきて、その時ふとそわそわ気分になりました。
今までを思い出してみると春は楽しいこともあるし、仕事始まりなどで大変だった記憶も結構あります。
大変だった時、私は頭が一杯になるととりあえず眠るか、そうでなければ気分転換を図ります。
大好きな読書に身を任せられればいいのですが、職場の悩み事や人間関係に疲れた時などは活字を目で追っていても頭に入らず同じ場所を無限ループしてしまう時もあります。
あぁ、これはダメだなと思った時に面白そうな読み切り漫画を探すのです。
今回はそうやって出会った一冊で完結する漫画の中で読み終わって「気持ちがいい方向に向いたよ!」というものを3つ紹介します。
『好きになるひと』高橋しん
『いいひと。』『最終兵器彼女』の漫画家高橋しんの『いいひと。』前に描いた初期短編をリミックスしたものです。
初期短編集ですが中身も描き直されているので絵も新しくとてもキレイです。
内容は一作会社員の新人研修の話がありますが、他の作品はジョギングや駅伝、マラソンなど走ることが舞台になっています。それぞれの舞台で「好きになるひと」をテーマとした作品が集められています。
小説でも漫画でも陸上競技にスポットを当てられた話で面白いものが増えてきていると思います。
小説なら佐藤多佳子『一瞬の風になれ』、三浦しをん『風が強く吹いている』、あさのあつこ『ランナー』とか。どれも素晴らしく面白くて夢中で読んだ記憶があります。
そしてこの高橋しん『好きになるひと』。この話は走る人の気持ちいい部分だけではなくて緊張とか悩みとか嫌な感じの部分も含めてリアルで魅力感じる空気感が詰まっている話だと思っています。
著者である高橋しんさんは実際に箱根駅伝を走ったことのある漫画家さんです。陸上競技の中長距離で箱根駅伝で実際に走るということはこれは凄まじくすごいことです。
だって陸上競技の世界の中で毎年テレビを始めとしたメディアで注目される一番に近いイベントですから。予選を勝ち抜ける大学のメンバーに入ることは才能があって、そんな人が四六時中を走ることに費やして得た結果といえます。花形中の花形です!
熱く語ってしまいました。私は高校時代陸上部でした。強くない都立高校の一部員です。800メートルに主に出ていて中距離の括りだったのですが高2の時に人数足らずで駅伝のメンバーに入りました。
1区が一番長い距離でエース区間。私の任された2区が一番短い距離でした。確か3キロ。
しょーもないですが、あんまり上の順位で襷が回ってきても怖いくらいの気持ちでアップしていました。
そろそろうちの高校の1区が来るというコールがあって、スタート地点に並びます。やがて遠くから1区を走っていた速い先輩が今にも倒れそうなへろへろな状態で見えてきました。
もう足はもつれて倒れそうなのに腕を振って少しでも身体を前に出そうと踏ん張ってます。顔は歪んでいて酷い有様の先輩は格好悪くて、でもこれ以上ないくらいに必死で。そんな先輩を見た瞬間に今までのしょーもない気持ちが全てとんで「がんばれ!」って。
倒れかけの先輩から「頼む」と襷を渡されて、先輩にも関わらず「任せとけ!」って言って飛び出して行った記憶が残っています。
3人抜いていって、ラストで4人に抜かされるっていう駄目な結果でしたけどね笑
私の経験はレベルの低いランナーの経験ですが、駅伝のそんな空気感がこの作品集の中の「アンカー」という作品で描かれています。
他の作品も同じ経験をしたことがなくても伝わるような、普段の生活の延長としてランナーがいることがわかるような話ばかりです。
だって仕事でも学校生活でも普段の生活でも何か有事の際にネガティブになったり、やる気になったり、終わって息抜きをしたりってほとんどの人があるような気がするからです。
この作品集自体は全く堅苦しさとかなくて、これらの短編から『いいひと。』描いてる時系列なので作品も優しくて温かいものばかり。勿論熱さのこもった作品もあります。
漫画なので絵がある分、読みやすいし同じ場面を共有しやすい気がします。
『ジジジイ』小山宙哉
「あるときは杖をつき若者に苦言を呈し、またあるときは半ズボンで街を駆ける。正体不明の快速快盗・通称「ハープ」。
その正体を知る者は誰もが口を固くつぐむ。盗むものは、心。年齢は70歳。」裏表紙に書かれている文章です。
かっこいいおじいさんの泥棒、「ハープ」のお話です。 「宇宙兄弟」を描いた漫画家の小山宙哉さんの作品です。初版が2007年だからかなり昔に描かれた本です。絵も今と比べると多少粗めです。
でもストーリーは冴え渡っていて、冗談みたいな設定なんですが、胸にくるものがあります。泣かせるエピソードが多いです。
それにかっこいいおじいちゃんて、本当にかっこいいと思います。
よくわかりませんね笑
でも自分がもし運よく歳を重ねておじいちゃんになった時、この話みたいなおじいちゃんでいたいと思える話でした。
運動能力の話ではありません、年月を背負い込むように重くなっていくのではなく軽やかな気持ちでいたいです。
絵空事かもしれないですけどね。
ただこの漫画を読んで爽快な気持ちになれました。
かっこいいおじいちゃんになりたいなぁ(しつこい笑)
『森山中教習所』真造圭伍
大学生・清高とヤクザの組員・轟木は高校時代の同級生です。
とんでもない事故で2人は再会し、おかしな教習所でひと夏を過ごす話です。
あとがきに「一生会えないけれど大切な友人がいたりする。
そういう部分を表現したかったのかもしれないです。」とあります。
とてもゆるい雰囲気漂う漫画なんですが、設定はシリアスで、笑ってしまうようなひと夏が感慨深くも感じてしまう物語です。
友人じゃなくても小さな頃から学生時代を思い浮かべて、その人のことを思い出すと色鮮やかなその時の空気を思い出すような人や思い出はあります。
でももうその人がどうなっているのか分からないし、死んじゃった人もいる。
そもそも現在のその人にそこまで会いたいのかと考えるとちょっと違う気がする。
ただ間違いなく言えるのは大切な時間でした。
思い出の価値は推し量るものでもありませんが、振り返って私自身の大切だった時間を探してしまった漫画でした。
おわりに
味のある3つの読み切り漫画を紹介しました。
頭の中が一杯な時でも漫画はするっと絵と一緒に頭に入ってきてストーリーの世界へと連れていってくれるから素敵です!
これからの気持ちがなんであれ、適度に休憩をとりつつ気分転換しつつこれからの活力を養っていきましょうね!