第160回直木賞受賞作品!
戦後復興期の沖縄という私達が風化させてはならない歴史と向き合った物語です。
第160回の直木賞候補作にはこのブログでも紹介させて頂きましたが深緑野分さんの『ベルリンは晴れているか』という同じ第二次世界大戦前後のドイツを舞台とした小説も入って近い時期に二つの作品を読んで歴史の重みを感じました。
本作品は激動の歴史の中で熱く生きる人たちが描かれています。
壮大な叙事詩とも言える傑作です。
あらすじ
戦後復興期の沖縄の物語です。
幼馴染の3人、グスク、ヤマコ、レイの頭の中には同じく幼馴染であり、消息不明になった1人の英雄的存在オンちゃんがいます。
オンちゃんという英雄的存在を頭に浮かべながら、島の現状とこれからと向き合い、若者達は熱く生き抜いていきます。
宝島の感想
沖縄の本土返還が今から46年前。沖縄の歴史はいつまでも風化させてはならないことの一つだと思います。
そういう時代と場所であることを目の前で知人が語る物語のように頭に浮かぶ小説です。
ただ、悲しいことのたくさんあった時代、という話ではなくて、登場する人々にはそれぞれ少しずつ違うけれども「私はこうしていきたい」という想いがあって人生を賭けています。
ある意味、皆がお互いにとっての英雄的存在です。ものすごいエネルギー。
その熱く生き抜く姿を見ていて、(私も革命を起こすとかではなくて)私自身のなんとなく流れていってしまっても成り立ってしまうような生きている時間に少しでも力を込めて過ごしていこうと感じています。がんばろ。
物語中にはオンちゃんの行方も含めて謎が散りばめられていて、後半謎が解けてくると驚きと面白みを感じます。
背景に深みがあると、伏線が回収された時の喜びもしみじみ深い。
熱く胸に染みました。
終わりに
沖縄の歴史は教科書でも習いましたし、THE BOOMの『島唄』など沖縄を題材とした歌も多く出ていて東京に住んでいたので沖縄との距離は離れているのに少し身近に感じられる存在でした。
高校の修学旅行で沖縄に行き、平和記念公園を訪れ、ただ知識として知っていた歴史に重みが加わったような気がします。
それとは別に食べ物が美味しくて、ソーキそばやパイナップルを食べ、綺麗な海を眺め本当に楽しむことができました。
大好きな県です。
当時の記憶というのは時間が経つと薄まっていきやすいものなのかもしれませんが本作のような飲み込まれるような力を持つ小説があって私たちは改めてしっかり歴史を胸に刻むことができました。
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