小説

佐藤正午『月の満ち欠け』感想【運命の繋がりを感じる究極の愛】

第157回直木賞受賞作品です。

先日、第161回芥川賞・直木賞候補作が発表されました。

年に二回、上半期・下半期で読書業界が盛り上がる代表的な文学賞ですが改めて過去受賞作にもスポットライトが当たっています。

佐藤正午さんは『永遠の1/2』ですばる文学賞を受賞し、デビューした作家です。

2015年には『鳩の撃退法』で山田風太郎賞を受賞しています。文庫で並んでいたこの作品のタイトルが面白く手に取った記憶があります。(勿論内容も面白かったです)

今作は細やかな生活描写で綴られた「究極の愛」の物語として佐藤正午さんの代表作です。

芥川賞・直木賞で盛り上がるこの時期に驚くべきラストに向かっていくこの直木賞作品を堪能するのはいかがでしょうか。

あらすじ

目の前にいるこの七歳の娘がいまは亡きわが子だというのか?

三人の男と一人の症状の三十余年におよぶ人生の物語です。

過ぎし日々が交錯していき幾重にも織り込まれていく謎に満ちた展開でラストの章でぐっと引き付けつけられます。

 

月の満ち欠けの感想

生死を超越した運命の愛が描かれています。

運命の愛を扱った物語は世の中にたくさんあるけれど、ここまで強くて絶対的な運命の繋がりが描かれているものはそうないのではと思います。

だけどもしこの本を友人に勧めようと思ったら特に前半部分じっくり読んで欲しいという気持ちになると思います。

人間関係の伏線が緻密なので整理しながら読むほうが楽しめるような気がしたからです。

きっと時間に追われて読むよりもじっくり1人1人の気持ちに乗っかって読んでいくとのめり込んでいってその想いを感じることができるだろうと思います。

私自身は何度か途中途中整理しながら終盤、よかったと胸が一杯になりました。

終わりに

こういう恋愛小説があるのかと驚いた作品です。

たくさん謎があって頭を整理しながら物語を追っていくと生まれ変わっても人を愛するという究極ともいえる愛が描かれていて圧倒されました。

終盤にかけて伏線が回収されて一気に引き込まれます。

直木賞作品のこの重厚な面白みは好きです。

先日、第161回直木賞候補作も発表されましたがまだ半分くらいの作品しか読めていません。でも窪美澄さん『トリニティ』も原田マハさん『美しき愚かもののタブロー』も朝倉かずみさん『平場の月』も私自身上半期に読んだ作品で本当に面白かったと思える作品なのでそれぞれが注目を浴びていて嬉しいです。

この賞をきっかけに読書を好きになる人やさらに大好きになる人が多くなってくれればと思います。

だって本当に面白い作品だもの。私もこれから他の候補作を追っていきたいなぁと思っています。

ABOUT ME
いちくらとけい
社会人の本好きです。現在、知的障害者の支援施設で働いています。 小説を読むことも書くことも大好きです。読書をもっと楽しむための雑記ブログを作りたいという気持ちで立ち上げました。

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