「無限の玄」が第31回三島由紀夫賞受賞、「風下の朱」は第159回芥川龍之介賞候補。
最強のコンビともいえる2つの物語が綴られている小説集です。
古谷田奈月さんは2017年には『リリース』で織田作之助賞を受賞するなど、注目を浴び続けている作家です。
タイトルを見ると皆さまはどんな物語を想像しますか?
清新にして獰猛な赤と黒の物語を紹介します。
Contents
簡単な説明
死んでも蘇る父に戸惑う男達を描いた「無限の玄」。
魂の健康を賭けて野球をする女達を描いた「風下の朱」。
奇跡といってもいいカップリングを果たした2つの中編小説集です。
無限の玄/風下の朱の感想
短編(中編?)が2作入ってます。両作に繋がりはありません。
読後感は爽やかとはいえなくて考え込ませられるような味わいのある物語です。
中学生とか高校生時代に国語の教科書の純文学小説を先読みした時のような気持ちになりました(分かりづらいですね)。
1つ目の『無限の玄』は設定が面白いです。家に戻ると父が死んでいる。警察が来て遺体を回収するが、夜中にまた父が現れるという始まりです。
玄は父親。無限の玄って!
これじゃ訳わからないと思いますが死んだはずなのに現れる父とそれぞれ受け止め方の違う個性的な家族の話です。
死とユーモアというか奇妙な雰囲気がやや暗めの雰囲気の中で描かれていて驚きの混じったやや笑いというか、新しい体験をさせてもらいました。
2作目は女子大野球部のメンバー集めの話ですが狂気的な雰囲気が流れています。
帯には「風に向かう娘たち」と書いてありましたが確かにその通りだと思いますがはみ出る狂気を存分に感じることができます。
どちらも短いのであっという間に読んでしまいました。
なんだろう、雰囲気としては芥川龍之介の『蜘蛛の糸』とか『羅生門』とか好きっていう人がいたらこれ面白いんじゃない?って薦めるような物語。
雰囲気がある文章が特徴です。味わいがあって酔えるような文章。
でもそれだけではなくて個性的な人物と設定が頭の中で躍動していました。
終わりに
2つの絶品の中編が入っているというのはなんだかお得な気分でした。
特に「無限の玄」が好みでした。確かに無限の玄だわ。
でも初見で「無限の玄」とタイトルを見ると難しそうな話を思い浮かべたのですがそのギャップに驚きました。
「風下の朱」は女性に読んだ感想を聞いてみたいです。異様な空気の怖さを楽しめたのですがどう捉えていいのか分からない部分もありました。
分からなさは面白くなかったということではなくて興味です。
そんな語り合いたくなるような小説集でした。