心地よい後味の悪さって何なのでしょうか。
帯に色んな人の短い感想が書かれているのですが、
「蜂蜜のように染みわたる毒」とか「心地よい後味の悪さ(誉め言葉)が本谷さんぽくてよかった…ww」とか「空恐ろしいような凄みがでてきた」とか。
体験したことのない面白さを味わうことができそうで手に取りました。
中毒性のある小説の世界を味わえる本です。
Contents
簡単なあらすじ・説明
三編の短・中編が載せられています。
1作目「本当の旅」
インスタにアップする写真で「本当」を実感する僕たちがいます。
そんなアラフォー3人での海外旅行の話です。
自撮り含めた写真や動画をすぐにグループラインに載っけて自分たちの「本当」を語りながら話は進んでいくのですが……。
2作目「奥さん、犬は大丈夫だよね?」
ネットショッピング依存症の妻が夫のさして仲良いわけでもない同僚夫婦の誘いでキャンピングカーでの旅行に行くことになるのですが……。
3作目「でぶのハッピーバースデー」
自分たちには普通になれない印があると思っている夫婦の話。
静かに、ねえ、静かにの感想
上に記載した内容だと意味わかんないですよね。
ネタバレが過ぎると面白くないので作品によってはあまり書きたくなくて。でも共通して言えるのはどの話も後味があまり良くないです笑
でも文章をすごく読まされてしまう。
帯には心地よい後味の悪さというコメントが紹介されていますが、あんまり心地よさはありませんでした。
ただ1つ1つの話の存在感が大きくて記憶に残る話になったことは間違いないです。
SNSなどの内容と固有名詞を使った文章が今ならではです。私は一作目の「本当の旅」でLCC便でマレーシアに行くんですが、はじめに荷物を7キロに抑えられなくて(7キロを超えると追加料金)周りから白い目で見られる場面を目にしたことがあって、あるあると思い出せました。
恐らく10年とか20年したら注だらけになるかもしれない小説の空気感がどの作品にもあるので読むなら今という感じを受けました。
Twitterで大反響というのもわかりますね。
個人的には1番、3作目の「でぶのハッピーバースデー」が1番気持ちに残りました。
職をなくした夫婦が色々話すんですが旦那は奥さんのことを「でぶ」と呼びます。
しかも一所懸命に就活する奥さんのここをこうしたほうがいいとかああしたほうがいいとか、そこに生き甲斐を感じているかのように言うんです。
大嫌いです笑
でも物語が進んでいくと、もうこれは読んで欲しいのですが、この夫婦が好きになってました。不思議ですよね。
尖った個性的で存在感のある小説を読みたくなったら(私はたまにあります)おススメです。
終わりに
SNSが登場する小説を少しずつ見かけるようになってきました。
今の時代を描こうとした時にSNSは確かにある世代を描くための外せない要素かもしれません。
そんな世界での日常の中で不穏な空気を主旋律として進んで行く作品たち。
ささるというか、えぐるというか、とにかくやや暗い気持ちになっても気になってついつい止められずに読んでしまう。
中毒性のある小説というのは実は自分の気持ちの核心を握られているということかもしれません。