創作

『終わらないものと終わるもの』【創作ショートショート】

はじめに

約1000文字の創作ショートショートです。2,3分で読むことができる分量です。

『終わらないものと終わるもの』

「悪は永遠に不滅です」

真夜中、止まった噴水の前で呟いた。

病気が治って健康になった人間でもまた不意に身体を壊してしまうように、夫婦や恋人がお互いにどれだけ努力したのだとしても時間が経てば相手の嫌なところに気づいてしまうように、悪い部分というのがなくなることはない。

私は広い公園でずっとヒーロー気取りでまた現れた悪者を退治した後、夜中のベンチで座りながらそんなことを考えていた。

私がいれば救われる人間が少しでも増えていく。それが私の存在意義なのだと思っていた。

いや、本当はカーテンを被ってヒーローの真似をした私に救われた人達が私を見る目にかつての姉が私を見てくれた姿を重ねただけなのかもしれない。

練馬区のこの街では年々子どもの数が減っている。一斉に建った団地で生まれた子ども達が街を出て、住んでいる人の高齢化が進んでいるのだから当たり前だと言える。小学校も中学校も次々に廃校になっている。

そろそろカーテンを脱ぐ時が来たのかもしれない。

全てが変化し、終わりがくるように私も……。

カーテンがすっと流れた風で揺れて膝小僧がくすぐったい。

なんだか少し笑ってしまった。

 

ベンチでぼんやりそんな風に穏やかな気持ちで佇んでいたが目の前に現れた人影を目にして一瞬にして気持ちが引き締まり立ち上がる。

ブルーのカーテンを纏った人間である。自称「杉並区のカーテンさん」だ。

彼に告白された私は断った。まるで嫌がらせのような告白だった。

「違うんだ」

杉並区は言った。私はファイティングポーズをとっていた。

「何が?」

「ただの友達として、一人の人間として接してみたいと思って、それを伝えにきたんだ」

元々話したことのない人間で友達も一人の人間もへったくれもない。

「もう現れないで。今すぐこの場所から去って、私には関わらないで」

「同じカーテンさんじゃないか。街の平和のために一緒にがんばろう」

全く何でこんなことになってしまったのだろう。私が始めた「カーテンさん」がどこからか伝わってこんな輩まで現れることになるなんて。

「そんなことは知らない。勝手にあなたが始めたことでしょ。それに……」私は一度頷いた。私自身の覚悟は決まった。「もうカーテンを着るなんてことは止めるわ」

「えぇ!」杉並区は大げさに驚く。「なんで?」

私はクールに言い放つ。

「カーテンは身に着けるものじゃなくてかけるものよ」

「むむ」と杉並区は唸った。そしてまるで予想していなかった言葉で反撃してくる。

「じゃあ、僕もカーテンを脱ぐよ。そして元カーテンさんとして一緒に……」

瞬間、私の後ろ回し蹴りが杉並区の延髄に入った。

「あうぅ」

不意の一発に杉並区は一瞬棒立ちになった後、真後ろに倒れた。

正義は悪にもなる。やっぱり悪人は不滅である。でもだからといって私自身がそこに留まる必要はない。

「前を向かなきゃ」

カーテンを翻し私はその場を去っていった。

すきすき。

何かが終わるときの寂しさを真夜中の静けさにこぼれていくような気がした。

終わりに

終わりを書いてみたくて書きました。

カーテンさんの話を続けて書いているといつの間にか感情移入している部分があって寂しい気持ちにもなります。

他にもカーテンさんでタグ付けされたショートショートいくつかあるのでもしよければ読んで頂けたら嬉しいです。

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一蔵とけい
一蔵とけい
社会人の本好きです。現在、知的障害者の支援施設で働いています。 小説を読むことも書くことも大好きです。読書をもっと楽しむための雑記ブログを作りたいという気持ちで立ち上げました。

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